ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

ワイルド所感

ランク戦におけるワイルドフォーマットは、今までの拡張全てのカードを使う事ができる、カードプールが莫大なモードです。各拡張のカードパワーが高いもののみを抽出してデッキを組むことができるため、デッキの完成度が非常に高く、デッキパワーはスタンダードデッキの比ではありません。

以前の環境では、奇数パラディンが最も強く、奇数パラディンへのカウンターとしてレノを始めとするコントロール系のウォーロックが蔓延っていました。さらに、コントロールデッキに強いデッキとして、アグロタイプの武器ローグ、コントロールタイプのビッグプリーストが存在していました。

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 各デッキ参考リスト

 

もちろんこれだけでなく、ナーフ前はアグロ最強格だった海賊ウォリアー、ワイルドで脅威のパワーを発揮する事が判明した偶数シャーマン、マナサイクロンの登場により達成が格段に早くなり、よりアグレッシブな構成が可能になったクエストメイジ等、多彩なデッキが活躍していました。

しかし、これらはほとんど極端に早いか遅いデッキで、中途半端な速度のミッドレンジデッキはほとんど戦えませんでした。ミッドレンジデッキが好きな私は、これらの中に手になじむデッキを見つけることができず、時々触る程度に楽しんでいました。

ところが、バーンズのナーフでビッグプリが弱体化し、突撃! 探検同盟のカードが追加されたことで環境が動きました。私にとってはビッグプリの弱体化が非常に大きな事で、これをきっかけに一度腰を据えて遊んでみようという気になりました。

 

ランク上げに使うデッキを探したとき、tier1に分類されていた秘策メイジが目にとまりました。

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左が秘策メイジ、右が海賊ウォリアーの参考リスト

 

秘策メイジ使用感

秘策シナジーを持つパーツやアルネスがまだスタンダードで使えた頃、安価なデッキだったので使ってみたことがありました。当時の秘策メイジは、サーチカードが魔法学者しかなく、また採用される秘策の枚数も4枚前後でした。場合によっては魔法学者メディヴの従者が雄叫びを発動できないことがあり、爆発力はあるものの不安定なデッキだという印象がありました。

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しかし、ワイルド落ちして旧カードも取り入れながら、上のリストのような形に洗練された結果、秘策メイジはとてつもない安定性を手に入れました。

秘策シナジーを持つカードは26枚で、デッキの大部分を占めます。このうち秘策は8枚、秘策のサーチカードが6枚と、シナジーが腐らない程度の現実的な採用枚数となっています。

何より私が評価するのが、2,3マナミニオンの優秀さです。2マナミニオンは、標準スタッツを備えた上でなんらかの秘策シナジーを持っています。3マナのキリン・トアのメイジも、魔法学者からごく自然に繋がる標準スタッツ持ちとして非常に頼もしいです。ワイルドのデッキの中では、比較的盤面で戦うデッキだということもあり、リストを眺めた段階ではこのデッキをいたく気に入り、しばらくこのデッキで回してみることにしました。

 

実際にランク戦で回してみると、その安定感をひしひしと肌で感じることができました。8枚の2マナミニオンのおかげで序盤の事故はほとんどありませんし、それらで盤面を取って占星術師ルナを安全に着地させることができます。今の環境だと手札からルナを除去することは難しいようですし、一度通せばデッキの軽さを活かしどんどん掘り進めることができるので非常に強力なカードであることが分かりました。

 

ゲーム展開の感覚としては、若干海賊ウォリアーに近いものを感じました。海賊ウォリアーのリーサルウェポンである武器の役割を、メディヴの従者雲の公子に委ねたような感覚です。

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武器との差別点は、盤面の継続打点、いわゆる「クロック」の増加に貢献させることができる点です。

武器は、相手のフェイスに入れる打点を確保できますが、盤面が劣勢の状態で装備しても強い動きとならないことが多いです。

対して、秘策メイジのミニオンは、プレイしたターンにダメージを飛ばしながらミニオンが盤面に出るため、盤面に隙ができません。さらに、火力としても使用できるため、武器のように挑発によって止められることなくフェイスへ打点を入れることができます。上のリストでは、火力だけで丁度30点出せるため、相手の回復を考慮しなければ、ミニオンを全て盤面でのトレードに使ってしまったとしても勝ち筋が残せます。

 

そして、このデッキの大きな特徴として、デッキ圧縮手段の豊富さがあります。

マッドサイエンティスト魔法学者で盤面を強化するついでに秘策をデッキから引いていくことができます。古代の謎は、0マナになった秘策を抱えておけば、雲の公使の雄叫びを確実に発動させたり、少ないマナ消費で魔力のフラックメイジAoEとして使用したりできます。ルナとの相性もよく、非常に汎用性の高いサーチカードです。

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占星術師ルナは、使い方次第で強力なドローエンジンとなります。盤面にも圧力をかけられるため、アグロ相手にもプレッシャーをかけられるカードです。

コントロールデッキ相手には、アルネスが初手にキープしたくなるほど強いカードです。この対面でのアグロデッキ側の負け筋は、序盤の札を全ていなされ、トップデッキ勝負を強いられてしまう場合がひとつ考えられます。アルネスは、装備したターンに致命的なテンポロスが生じてしまうことと引き替えに、次ターン以降怒濤の盤面展開を可能とする武器です。毎ターン手札を全力で切れば、さすがのコントロールデッキでもどこかで処理できなくなるターンが来るでしょう。隙を見せた途端に火力でリーサルを取れるほどのパワーをこのデッキは秘めています。

 

秘策メイジ使用側の感覚としてはこのような雰囲気でゲームをこなしていました。ここから相手のデッキに目を向けます。対峙したデッキは、懐かしいものから目新しいものまで多岐に渡りました。

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秘策メイジで明確に不利がついていたのは、このパラディンでした。ハンドバフ、超電磁を重ね、早いターンから巨大なメカを作ってくるデッキです。秘策メイジは、横の展開にある程度耐性がある反面、縦の除去手段は乏しいため、超電磁を重ねられると詰みかねません。火力が重宝するので、フラックメイジや従者はキープしても良さそうです。

他にも、レノロック、レノハンター、コンボプリーストあたりは厳しい印象があります。強気に攻めきるプレイが求められそうです。

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環境でもメジャーなデッキである、偶数シャーマンには有利でした。相手は盤面で戦うミッドレンジデッキなので、フラックメイジの刺さりがいいです。手札に引き込めればかなり勝ちに近づけます。

他には、海賊ウォリアー、奇数パラディン、奇数ローグ、ビッグプリーストには有利でした。秘策メイジは特に盤面で戦うデッキ相手に無類の強さを誇るようです。

 

ワイルド所感

ワイルドをしばらく回した程度で抱いた感想は、評判から予想していたよりは悪くないというものでした。

デッキパワーがもれなく高いため、どの試合も押しつけ合い感が強くなるのは否めません。しかし、デッキパワーが高い位置で均衡しているために、少なくともゲームにならないような相性差を持つデッキは環境デッキにはなさそうです。

 

私がワイルドを触って驚いたのは、発見を始めとする外部リソース補給ギミックがほとんど採用されておらず、きっちり30枚での戦いを楽しめる点です。

スタンダードでは、ほとんどのデッキに発見効果を持つカードが採用されており、それによって分岐点が増え、ゲームがより奥深いものとなっています。しかしこの要素は、期待したカードを入手できずフラストレーションがたまったり、ゲームのテンポを悪くする冗長な効果に感じてしまったりします。カードそれぞれの地力が高いワイルドでは、発見に頼らずとも十分決着をつけるだけのパワーがデッキに備わっているため、スピーディな勝負を望めます。

 

アグロデッキにはレノ、コントロールデッキにはメックトゥーンという大雑把なメタに始まり、秘策メイジにはメックパラディン、メックパラディンには退化が採用されている偶数シャーマン、偶数シャーマンには秘策メイジと、かなりいい形で環境が構成されているように思います。もちろんこれら3デッキだけでメタが回っているわけではなく、多彩なデッキ間の相性が複雑に作用し合って環境が形成されています。ちょっと回しただけでは全てを探りきることはできません。スタンダードからの気分転換にプレイするにしてもかなり楽しむことができるように思います。

 

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古くからハースストーンを遊んでいるプレイヤーは、当時の面影を残した懐かしいデッキと出会えますし、そうではないプレイヤーも新鮮さに溢れる環境に身を置くことができます。ワイルドにも安価なデッキはあるようで、メックハンターはその代表例として挙げられそうです。少なくとも今の環境であれば、ワイルドをあまりやったことのないプレイヤーは一度触ってみても損はないと思います。