ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

トップデッキ

トップデッキとは、文字通り山札の一番上のカードのことを指します。転じてカードゲームでは、ピンチの状況を覆しうるカードをターン始めの1ドローで引くことを意味する用語として広く使われるようになりました。今引き、神引きといった言葉も同義語、類義語として挙げられます。

トップデッキは、カードゲームで最も盛り上がる要素といっても過言ではないでしょう。しかし、ゲーム展開にドラマチックさをもたらす反面、ランダム要素が強く、トップデッキを食らうプレイヤーは不快な思いをしてしまうことも少なくありません。

この記事では、相手と自分に場合分けして、それぞれのトップデッキについて考えてみたいと思います。

 

 

相手

カードゲームを始めた頃は、自分のデッキに入っているカードを覚え、そのデッキにおける役割を知り、実際にどのタイミングでプレイするのか学ぶことで精一杯です。相手の動きに目を配る余裕はほとんどありません。

しばらくプレイして、自分のデッキの動かし方が分かってくると、初めて相手の使っているデッキや動きに目を向ける余裕が出てくると思います。このとき相手の手札を注視していると、使用されたカードがマリガン時点で手に入れられたカードなのか、それまでのドローで引かれたのか、はたまたトップデッキだったのかということを識別することができます。トップデッキで現状を打破された場合、それを決められた私たちにとってそれはどのような意味合いを持つのでしょうか。

 

相手から使用されたカードがトップだろうとそうでなかろうと、こちら視点ではそのカードを使われるか使われないかの2択なので、特別な意味は持たないというのが基本的な考え方です。デッキに2枚積んであるカードで、まだ1枚も見ていないカードであれば、相手が手札に抱えている前提で動くのがベターでしょう。どうやってもケアできない場合や、相手が解答を持っていなかった場合直ちに決着がつくほどのアドバンテージを稼げる場合は、リスクを冒してリターンを得る事を考えます。

f:id:stelmosfire:20191129210640p:plain

しかし、トップから使用されることが意味を持つ場合もあります。それは、以前のターンでそのカードを使わざるを得ないターンがあったにも関わらずその他苦し紛れの行動で凌いできたことから、手札には持っていないだろうと読むことができたときです。手札にないことが読めた場合には、トップから解答を引かれる事を恐れるよりも、解決札がない前提で攻勢に出た方が勝算が高いでしょう。

 

当然のことながら、ゲーム開始からターン数が経過しているほど山札が減り、まだ引かれていないカードにアクセスされる可能性が高まっていきます。例えば、10T経過時はお互い少なくともデッキの半分ほどを引き進めており、それは2枚積みのカードを1枚ずつ引くことのできうる枚数です。それ以降はいつ切り札を引かれてもおかしくないという心づもりで、気を引き締めてゲームを進めたいです。

 

zferry2.hatenablog.jp

ドロー枚数ごとのキーカードドロー確率の参考記事です。この記事を参考にさせて頂けば、後手フルマリガンで10Tまでに2枚積みのカードのうち少なくとも1枚を引く確率はおよそ80%です。

 

f:id:stelmosfire:20191129214610p:plain

具体例を使って考えてみます。zooをはじめとする盤面で戦うデッキでコントロールウォリアーを相手にするとき、最初に迎える大きな局面は5マナ時の乱闘の有無かと思います。そこでウォリコン側の5マナカードに焦点を当ててみます。

ウォリコンの5マナカードは、乱闘以外にもジリアックススーパーコライダーダイノ・マティックと大幅なテンポスイングを仕掛けられるカードが勢揃いしています。上のリンク先の記事によれば、先手フルマリガンのウォリコンが5Tまでにこれら4種計6枚のカードいずれかを引ける確率はおよそ94%です。よって、5Tまでこれらのうち少なくとも1枚は引かれているつもりで動かなければならないことが分かります。

<乱闘×2><ダイノ・マティック×2><ジリアックス/スーパーコライダー>に分けて見ると、それぞれおよそ58%の確率で1枚は引かれています。よって、この中で1点読みをしてプレイしても、その読みの勝算は約40%といささか分が悪い事が分かります。しかし、ここを抜けなければ勝ちはつかめないのでなんとか抜ける方法を考えたいです。

 

上のカード群をその性質でグループ分けします。

<乱闘×2>は展開を抑えることでケアできる

<ダイノ・マティック×2><ジリアックス/スパコ>は展開することによってケアできる

 

枚数を見ると前者よりも後者の方が多いため、後者に分類されたカード群をよりケアしておきたいところです。 ですから、私なら相手が乱闘を持っている線を切って、手札のカードを全力で展開します。ここで乱闘を使われなかった場合、かなりのボードアドバンテージが見込める上に、乱闘を持っていないことが分かるためその後も強気に展開し押し切ることができます。

しかし、もし全力展開した盤面を乱闘で返されてしまった場合再起不能になってしまうのに対して、展開を抑えた場合再展開用の手札が残るので、後者のカード群を食らっても再展開して盤面を形成できれば中期戦を挑むことができる可能性もあります。長引くほどアグロ側にとって分が悪くなっていくため短期決戦を目指したいですが、手札次第では一度展開を控えるのも手です。

 

自分

 ゲームプランがアグロに近い速度であればあるほど、トップデッキを戦略に組み込むことはふさわしくありません。ゲームの決着がつくまでに、トップデッキの質がある程度担保される程の枚数山札を減らすことができないためです。基本的に、マリガンで得た手札でゲームプランを組んでおき、毎ターン初めのドローや相手の動きに合わせながら適宜修正していく流れになります。

最近のデッキを例に挙げれば、シャーマン側でまだ引いていないサバクウサギのために手札の進化を温存しておく、同じくまだ引いていない魔古の肉細工師のために手札の突然変異を温存しておくといったプレイは一般的には控えるべきです。しかし、同速以下のデッキと戦う場合はカードをしっかり有効に使わないとバリュー負けしてしまう恐れがあるため、長期戦を見据えながら適切な組み合わせが揃うまで待つ事も選択肢に残ります。

 

例外を挙げると、例えば手札から火力を出せるカードをたくさん積むことをコンセプトとしたアグロデッキであった場合、高確率でトップデッキも即打点として変換できるため、その中の最低打点をリーサルプランに組み込むことは的外れな戦略ではありません。この「最低」打点とはトップして許されるカードの種類をできるだけ多く保つための考え方で、ゲームが長引き状況が厳しくなるほど求める打点を高くして、条件を緩めていきます。ちなみにこの考え方は相手のカードをケアするときにも応用でき、基本は常に最悪の事態を想定しながら、どうしてもケアしきれないときは「持っていないだろう」と少しずつ条件を緩くしていきます。

f:id:stelmosfire:20190926211136p:plain

 

手札が見えない相手のトップデッキと違い、自分のドローから必要なカードを引ける確率は (目的のカードの残り枚数)/(残りの山札の総数) で求めることができます。例えば先手17T目、ゲーム中でドローソースを1枚も使用していなかった場合、残り山札は10枚です。ここでまだ1枚も引いていない2枚積みのカードを引く確率は2/10、つまり1/5です。20%と聞くとかなり低い確率に聞こえますし、勝ち筋に組み込むには不安が残る数字だと感じます。しかし、この時点でデッキはかなり圧縮されており、トップデッキの確率としては現実的な方です。

 

最後に

カードゲーム、特にハースストーンは、カードを引く順番に干渉することができず、介入することのできない乱数に試合を左右されていると感じることも少なくありません。しかし、このゲームで起こることの多くは確率として簡単に数字に変換でき、その出来事が奇跡的に起こるものなのか、比較的起こりやすいものなのか把握することができます。解決札を持たれている可能性が高い場合はそれをケアする動きを取れますし、どうしてもトップデッキで解決しなければならないゲームである場合は、多少盤面を捨てても事前にドローやサーチを介してデッキ圧縮を進め、トップデッキが成功する確率を上げておくことができます。

少なからずギャンブル性が潜んでいるように感じられますが、それがカードゲームの本質だろうと思います。うまいプレイとは、少しでも勝ち筋として太いプレイを選択し、その勝ち筋を潰さない範疇で可能な限り負け筋を無くすことでしょう。私としては、カードゲームを「運ゲー」だと非難するのはその本質を否定してしまっているようでしっくりきません。