ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

占術

カードゲームでドローするとき、どのような目的でそれを行っているだろうか。

手札に新しいカードを加える、もしくはドローするために使ったカードより多くの枚数を引くことで手札を増やし、プレイの選択肢を増やすという目的が大部分を占めると思う。

いつからか覚えていないが、最近得た考え方として、山札の残り枚数を減らすことによってトップデッキの内容を少しでも確かなものにし、トップデッキ込みのゲームプランをより現実的なものにするという狙いがここに加わった。

 

この考え方に基づけば、占術はドローと同じ効果を持つと考えることができる。

占術とはMtGにおいて設定される能力で、指定された枚数山札の上からカードをめくり、好きな枚数ずつ好きな順序で山札の上か下に戻すことができるものだ。

今回は主にこの能力について書き連ねていきたいと思う。

 

 

ドローと占術

ドローは「山札を消費して」「トップデッキの信頼性を向上させ」「手札の選択肢の数を増やす

占術は「山札を消費せず」「トップデッキの信頼性を向上させ」「手札の選択肢の数には干渉しない

 

ドローと占術はこのようなチャートで表現できると思う。

 

ドローは、山札のカードを指定枚数手札に移動させるものであり、物量で戦うことを可能にする一方、ライブラリアウトを見据えた戦いには弱い。

引いた結果望みのカードを手にする可能性があるのみならず、山札を掘り進める性質上将来的なドローの質(確度)も向上させることができる。

 

一方占術は、山札の中でカードを移動させるものであり、ライブラリアウトの速度には影響しない。

めくったカードを上に固定した場合、瞬間的にトップ込みでのゲームプランを確実なものにしてくれる。下に送った場合はそれ以降のドローの質(確度)を向上させてくれる。

 

占術の効用

上に書いたことと重複するような内容になってしまうが、ドローに手札補充とデッキ圧縮の二つの側面があるのと同様、占術にも場合によって二つのパターンがある。

 

ひとつは、めくったカードをデッキトップに固定した場合。この時、上に置いた枚数分だけそれ以降のドローで引けるカードが確定しているため、しばらくのトップデッキまで含めたゲームプランが確実なものとなる。

占術していない場合でも、現状ではどうしようもない場合や、大局的に見てどうしても決めなければいけないコンボがある場合はトップに頼ったゲームプランを組むことがある。しかし、トップデッキのランダム性はなぜかカードゲームで嫌われる要素のひとつであるため、これを避ける意味で占術はとても有意義だ。

 

ふたつめは、めくったカードを下に固定した場合。この場合は、弱いカードをデッキ下に送ることで山札を掘り、必要なカードにアクセスできるまでのターンを早めることができる。

ライブラリアウト負けを誘わない点でも評価できるが、あくまで擬似的なデッキ圧縮であるため、山札をシャッフルし直す効果とは相性が悪い。占術の恩恵をフルに受けるためには、占術によってめくったカードを全て引くまで山札をシャッフルしないでおく必要がある。

しかし、シャッフルしてボトムのカードの位置がずれても、そのカードを引くまでゲームが続くとは限らない。シャッフルまで考慮すると問題は複雑になる。

 

 

では、占術はトップに置くこととボトムに送ることの間に優劣はあるのだろうか。

 

結論としてはどちらもメリットがあり、場合によるというものになるだろう。

上に置くか下に送るか、またゲーム中にシャッフルを含むアクションを起こすかに関わらず、占術後1枚でもカードを引けば占術の恩恵は受けているといえる。

引かないパターンは占術を行なったあとドローを介さずにシャッフルする場合だ。この時おそらく占術とシャッフルは同一ターン内に行われている。同一ターン内に両方できるマナがあるなら先にシャッフルしておけばいいので、占術の恩恵を受けられない場合はほとんどの場合プレイミスが存在するはずである。

 

なぜここで占術の効果について確認したかというと、プレイヤーによって占術の認識が異なる場合がありえるからだ。

 

いつも上から引いてくるカードが望み通りのものでない点に不満を抱いているプレイヤーにとっては、占術によってトップデッキを確定させることができる点に大きな価値を見出すだろう。この場合、占術によって下に送る行為に関しては相対的に魅力が薄くなる。トップデッキを100%の情報として固定できることに比べ、いらないカードを下に送りデッキを掘り進めることによりもたらされる効果はほんの数%の違いにしかならないからだ。 

 

対して、ひたすらドローやデッキ圧縮を進め、思い通りのゲーム展開を再現することに楽しみを見出すようなプレイヤーは、下に送ることによるデッキ圧縮に似た側面に着目するだろう。私はこちらのタイプだ。

占術で見たカードを上に置くという行為は、次にトップで引くカードを確認しただけに過ぎず、その安心感のために山札を疑似圧縮する機会を失ったと考えられる。このため、占術をするならせっかくだから切り札級のカードでもない限り下に送ろうという発想になる。

これは結果論的な発想でよくないと思うが、MtGではデッキの半分近くが土地であり、カードを引けば引くほど土地が必要以上に溢れてしまう。肝心なタイミングでのドローが土地で、もっと掘り進めていたらあるいは…という後悔を避けるためには占術も駆使して少しでもデッキを掘っておきたいはず。

 

占術の存在意義

今日のMtGでは、多くのカードに占術効果がつけられている。これは私の推測だが、土地システムが採用されているために事故が頻発する構造になっているからこそ、事故率を緩和させるためにこの効果が利用されているのだと思っている。

土地事故を解消するための占術なのか、占術をいきすぎたものにしないための抑止力としての土地なのかは新参の私にはわからない。しかし、占術システムがMtG中期から導入され始めたらしいことから、ユーザー体験の改善のために占術システムが導入されているのだと思う。

 

特にマナレシオに関して、異種カードゲーム間でよく比較される。初期ライフや手札枚数に始まり、少なからずルールの差別化が図られているなかで、マナレシオのみ無理に同一の尺度で比較しようとするのはナンセンスだとは思っているが、ここで敢えてドロー関連のシステムに関していくつかのゲームを比較してみたい。あくまで私見なので、気になったところは自分で触って確認してみて欲しい。

 

ハースストーンでは、30枚の山札が与えられ、1ターン目の手札は4枚。手札を減らさないことでプレイヤーに選択肢を用意する試みが施されており、それはデッキ外リソース補充が多い。デッキ内のカードのみによるゲームのワンパターンな展開を避けようとしたものだと思う。

 

シャドウバースは、山札40枚、手札4枚でスタートする。デッキ外リソースはゲーム側からランダムに提示されるため、プレイヤーの意志の介入余地が少ない。これを嫌った結果、多くのカードにキャントリップをつけ、デッキ内のカードを使って手札に多くの選択肢を設けることを選んでいる。

 

MtGは山札60枚、手札7枚、マリガンが特殊でキープorフルマリガンいずれかを選び続け、フルマリガンを選んだ回数分のカードを手札から山札の下に戻すというシステムが採用されている。

マリガンシステムに加え、土地システムのために上2つのDCGより事故率が高くなっている。これを解消する手段の一つとして、占術が設けられている。

60枚の山札の厚みのおかげで、上のゲームと比べてもデッキ圧縮の恩恵が小さくなっており、カードゲームの醍醐味である引いたカードによって柔軟に戦略を組み立てる立ち回りを損ねないようになっている。

ドローを配らない理由は、色毎の特長を保持するためだと思う。MtGではカラー制を採用しているために、自分のデッキでやりたいことに関して必要な特色を持つ色を組み合わせることで、プレイヤーの思い通りのデッキを組むことができるようになっている。例えば、ハンデスの黒とドローの青を組み合わせることで、圧倒的ハンドアドバンテージで勝ちに行くデッキを組むことができる。この色毎の境界を崩すことで、多色デッキを組むことの意義を失わせないための方法だろう。

 

まとめ

他のカードゲームとの比較から、占術は土地事故によるユーザー体験の悪化を緩和するためのものではないかと私は考えた。

総合的に見れば、事故率は他のゲームと大きな差はないと思う。

しかし、私は占術システムがふんだんに用意されているMtGが一番自分の思い通りにゲームを組み立てることができていると感じている。

これは、もともと事故率の高いシステムを、ユーザー側の操作によって事故を緩和させることで、自分がゲームに介入できていることを実感させる非常によくできたシステムだと思う。

ここまで書いておいてなんだが、私はマジックを触り始めてまだ日が浅く、占術関連のことを含めてまだまだ理解が足りていない。

これからマジックと付き合っていく中で、ここに書いた解釈ににどれだけの変化が起こるか楽しみにしながらプレイしたいと思う。