ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

ワイルド勢とスタンに参入してみて

12/18、第2回フェル学杯という大会が開催された。この大会は、3人でチームを組み、それぞれ1デッキ用意してBo3を行うというルールの特殊な大会だ。大会中は通話も許可されているため、プレイを話し合ったり、展開の一喜一憂をチームメイトと共有したりと、個人戦とは違った楽しみ方ができる。募集を見た私は一目で惹かれ、大会情報を共有したところ反応が返ってきたプレイヤーと話の流れで一緒に参加することになった。

この記事ではチーム結成から大会参加までの流れと私が感じたことをまとめていきたいと思う。主題が大会についての感想ではないことと、恐らくポジティブな内容にはならないであろうことを断っておきたい。前書きであるこの項で大会について触れておくと、運営がとても丁寧で印象がよく、大会ルールも個性的な、非常に面白い大会だった。また機会があればぜひ参加したい。

 

 

チーム結成

上に書いたとおり、大会について反応が返ってきたプレイヤーと流れで一緒に出ることになった。ちなみにこのプレイヤーはワイルドプレイヤーであり、スタンダードフォーマットの大会に興味を示したのが意外だった。恐らく、フォーマットは度外視でチーム戦という部分に惹かれたのだろう。ワイルドでは個人戦の大会すらほとんど開催されないため、ましてやチーム戦での大会となれば気になるのも分かる。

3人チームということで、私も一応ワイルドを触っていることを加味して、ワイルド勢という形でチームを組むのがきれいに思えるメンツだった。ちょうど話題に上がったワイルドプレイヤーに声をかけたところ快諾してくれたため、この3人でチームを組むことになった。

 

練習期間

ワイルドプレイヤーがスタンの大会に出るということで、まず障壁となるのが資産の問題だ。よくワイルドには十分な資産がないと参入しづらいと思われがちで、つまりワイルド勢は潤沢に資産を抱えているのだろうと思うプレイヤーも多いのではないだろうか。実際の所は必ずしもそうではない。確かにスタンダードはカードプールが狭いため、新規参入の際には入りやすいフォーマットだ。しかし、スタン落ちにより毎年使えるカードが入れ替わっていくため、長く続けようとすれば新拡張を追い続けなければならない。対してワイルドは、プールから落ちるカードはないため、メタ的に落ち目になる場合を除いてデッキが使えなくなるということはない。昔のパワーカードも存分に組み込むことができるので、新拡張によるチューニングは控えめでも十分戦える。デッキをひとつ用意さえすれば、追加投資ほとんどなしに長く遊ぶことができるのだ。

以上のことから、彼らは現スタンダードのカードを満足に所持していなかった。一人はウォリアーなら用意できそうだということでヒーローが決定。もう一人は、これから作る予定のワイルド版聖典パラディンにパーツの流用が利く聖典パラディンをなけなしのダストをはたいて用意するということになった。

私は、以前触っていた秘策ローグに酷似している現秘策ローグが環境入りしているということで、新カードを数枚作ってこれを用意することにした。練習期間も短かったため、既に練度が蓄積されているデッキを選んだのはいい判断だったと思う。

 

次に障壁となったのが、モチベーションの問題だ。ワイルドプレイヤーがワイルドを遊んでいるのには彼らなりの理由がある。そして、私が話を聞いてきた限りそれにはスタンダードフォーマットに対するネガティブな印象が影響していることがほとんどだ。既にマイナスイメージを持った状態で、果たして彼らが満足に練習を重ねることができるのかという点が今回の大会における私の最大の懸念点だった。

デッキの方向性が見えた段階で、練習方針についても意識を共有しておこうと思い、いくつか留意項目を提示したのだが、どれも無理しない程度にという消極的なものにしておいた。万が一練習に対してやる気がなかった場合、私から強制したところで満足な結果を得られないどころか、かえって士気が下がることが想定されたからだ。これに関しては、大会が終わった今でも正しかったかどうか判断しかねる。もしかするともう少し練習に強制力を持たせていた場合、本番のパフォーマンスが向上していた可能性はなきにしもあらずだ。

予想は概ね当たっており、ワイルドプレイヤーのふたりは現スタンダードに関してもあまりいい印象を持てなかったようだ。私の持論では、知識のないプレイヤーが低いモチベーションでゲームをしても当然勝てないため、目についたゲームの悪いところに責任転嫁してさらに離れてしまうという悪循環が、特にマイナス思考を抱きやすいプレイヤーの間では往々にしてあると思っている。周りでもいくつかこのパターンを実際に目にしてきた。しかし、今回の場合はフォーマットの差こそあれどカードの知識は十二分のプレイヤーが集まったため、この説は当てはまらないだろう。とするとこれはゲーム性に関する好みの問題で、他者である私が介入する余地はほとんどないように私には思えた。

個人的には、チームでの協力プレイということで、カードゲームでは珍しい意思疎通の部分を重点的に練習したいと思っていた。しかし、メンバーがスタンのランク戦を数戦回し、感想をひとしきり述べたあとワイルドフォーマットへ戻ってしまう様子を見て、これは少なくともランダムマッチング下での練習は難しいだろうと悟った。私が仮想敵を務めるのは完全な意思疎通ができなくなるためよくない。となるとメンバー以外で対戦相手になってくれる気心の知れたプレイヤーが必要になるが、心当たりがなかった。この状況は私の手には負えなさそうに感じたため、とりあえず自分は納得のいくまで練習しておこうと決めた。

 

練習期間中に一度、私ともう一人のメンバーを交えて通話する機会があった。彼のデッキはそのときに作ったのだが、直後回す姿を見て非常に感心した。とても初めて触ったデッキだとは思えないほどプレイがしっかりしていたからだ。ゲーム自体に対する理解度でデッキの練度不足を補っているのだと思う。後に交代したときに見せた私の秘策ローグのプレイにも、とても初見だとは思えないほど全体のゲームプランまで踏み込んだ深い視点からの意見が飛んできたことからも理解度の高さが裏付けられる。

彼の選んだデッキ自体も気に入ったようで、そのままラダーを回してくれそうな感触だったため、ひとまず安心したのを覚えている。

 

 

大会本番

全員が集まって練習する雰囲気になれたのは、大会の直前だった。私はこのまま揃って練習することなく本番を迎えるのだろうと思っていたので、ここで集まれただけでも上々だと感じた。

仮想敵の問題も、応援に来てくれたプレイヤーが申し出てくれたため、ぎりぎりのところで理想の環境が整うこととなった。付け焼き刃の練習だったため、当然のことながら私たちのプレイには練度不足な点が否めなかったが、メンバー間のコミュニケーションに関してはまずまずな感触を得られた。ここで若干自信をつけられたのは私としては本当に大きかった。相手になってくれたプレイヤーには感謝している。

 

大会本番も特にごたごたは発生せず、円滑にゲームを進めることができた。出るからには悔いの残らないようしっかり準備して挑みたいと思ってはいたものの、意識的にはふらっと参加した大会だったため、準決勝まで残ることができたのは十分な結果だったと思っている。他のメンバーは訳も分からず負けてしまった印象が強いようだが、このわだかまりは今後開く予定の身内大会で解いてほしいと思う。

 

所感

大会に参加して、私はスタンとワイルドのプレイヤー間の深い溝を目の当たりにした気持ちでいる。大会に出る程度では彼らのスタンに対する原動力たり得なかった可能性もあるが、これ以上のきっかけを私は思いつかない。

 

ワイルド人口が著しく少ないことから、どうにかワイルドプレイヤーが増えるようにとの思いを目にすることがある。その一方で、かなりの頻度でワイルド環境に対する悪態も散らばっているせいで、このフォーマットの魅力が見えないことが参入の少ない原因だと思っていた。しかしこれは本質ではなく、両フォーマットのプレイヤーの嗜好の間に隔たりがあることこそがフォーマット間の行き来がない原因なのかもしれない。

 

先日公式が公開した新規向けハースストーン紹介動画に、ワイルド編はないのか、というような話を見かけた。既にゲームをプレイしている層は自分の好みがはっきり分かっているため、ニュートラルな視点で参加することができる新規ユーザーをターゲットにワイルドへ招待するというのは合理的に感じる。しかし、私はワイルドをRPGにおけるエンドコンテンツのようなものだと思っており、初心者にいきなりエンドコンテンツを勧めるのはいかがなものかと思う。発信者はネタのつもりなのかもしれないが、真に受けたプレイヤーが本気になって反応している様子まで見えた。まさかとは思うが、扇動に乗ってくる様子を見て楽しんでいるのだとしたらぞっとする。

ただ、これは真に受けてしまうほど切実にサポートを必要としているフォーマットであるということの裏返しでもあるかもしれない。私としては、ワイルドは第一印象が異常なほど悪いだけで、同じカードゲームであるということもあり本質はスタンもワイルドも一緒だと思っている。なんとなく流れでワイルドを敬遠しているプレイヤーがいたら、自分の目で見てその是非を確かめてほしい。