ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

カルドハイム ディミーアローグ

私はゼンディカー環境でディミーアローグが現れて以来、ずっとこのデッキを使用している。初めてのミシック到達をこのデッキで経験し、カルドハイム環境初期に行われたメタゲームチャレンジで7勝を記録した。このゲームを始めて以降有数の思い入れあるデッキなので、現時点でのこのデッキに対する印象をまとめておきたいと思う。

 

このデッキを初心者におすすめできるデッキとして紹介されているのをしばしば見かける。私もこの考えには同意できる。なぜなら、このデッキによってアドバンテージの概念を簡単に習得することができるからだ。

 

リストから、相手の墓地の枚数を参照して強化されるカードを軸に戦うデッキであるということが分かると思う。切削効果を使って相手の墓地を肥やし、各カードをアクティベートして臨戦態勢に入る展開を作ることを目標にする。このことから分かるとおり、切削はカードの能力を起動するための手段であり、必ずしもLOを勝ち筋に据えるわけではないということは覚えておいた方がいい。特にこのデッキと対峙する時に重要な考え方で、サイドボードを使ってデッキの枚数を増やすことによって、確かにLOを遠のかせることはできる。しかし、デッキの密度の低下による安定しにくさというデメリットのほうが目立ち、結局うまく回らないままクロックで削りきられてしまうということになりかねない。主に土地枚数とスペル枚数間のアンバランスが原因だ。LO負けを嫌ってデッキを不自然に厚くするくらいなら、脱出カードを積み墓地枚数を調整することで、物語への没入湖での水難を腐らせるプランをとったほうがはるかに効果的である。

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話が逸れてしまった。

 

このデッキはクロックパーミッションと呼ばれる、ビートコントロールというデッキタイプに属するデッキだ。展開したクリーチャーをカウンタースペルで相手の除去呪文から守り、クロックでライフを削りきることを主な勝ち筋とする。

ビートコントロールの名の通り、このデッキはコントロールデッキとして振る舞うこともできる。自分より速いデッキ相手にはコントロールデッキとして立ち回ることが多く、回り方によるが基本的にこのデッキは中速以降の速度感なので、ミッドレンジもしくはそれより速いデッキに対してこのプランをとる。

リストから分かるとおり、デッキに入っているのは1:1交換を取るカードがほとんどである。カウンターや単体除去が最たる例だ。全体除去や肉厚なクリーチャーを使って複数交換を取ることによりアドバンテージを稼いで差をつけるのがコントロール側の狙いのはずだが、1:1交換しかできないデッキで果たして本当にコントロールすることができるのだろうか。

 

これを可能にする仕掛けがふたつほど用意されている。

ひとつは、切削だ。仮に60枚(正確には60から土地を除いた枚数)全てで1:1交換を続けたとしても、決着はつかない。ノーマリガンスタートの場合、後攻がデッキ切れで負けることになるだろう。これを回避するために、相手の山札を直に削ることで対処すべきカードの枚数を減らすのだ。これによって相手はリソースの総量が減少するとともに、無闇なドローにリスクが加わり、窮屈な展開を強いられることとなる。

 

もうひとつは、物語の没入である。カードを1枚使って4ドローしているので、単純計算3枚分のカード差をつけることができる。カード1枚のバリュー差ではなく、物量を活かしてコントロールするというのがこのデッキの戦略なのだ。

 これは没入のバリューで戦っているのでは、と考えたことは私もある。これには、土地を4枚引いた場合を当てはめて考えてみたい。土地4枚ではボードに及ぼす影響が皆無で、複数交換は狙えない。この場合は、デッキを圧縮してトップデッキの質を高めた点にバリューを見出すべきだと思うが、このデッキはほとんどのカードが2マナ以下で構成されている。トップデッキ一枚ではフラッドしたマナベースを十分に活かすことができないため、土地を引きすぎた没入にバリューを見出すのは困難だと考える。

上記の理由から、没入は使用ターン以降のマルチアクションを狙うために打つものであるという認識を持っておきたい。クリーチャーの展開と相手の脅威に対するカウンターでダブルアクションを構えるのは、クロックパーミッションと呼ばれるこのデッキの主要な戦術だ。

 

多くのゲームではまず4Tに物語の没入を打つことを目標においてマリガンし、ゲームプランを立てる。つまり、4Tまでに②○○のマナベースを用意することと、切削を使って相手の墓地枚数を7枚以上にしておくことを目指す。4Tに没入を引けていなかったとしても、切削が進んだ状態なら風泥棒でドローできるし、複数ドローカードである心を一つにも投入されている。これらを使って必要パーツを引きにいけるのが、このデッキの強みだと思っている。

 

 1:1交換によるアドバンテージの稼ぎ方だが、基本的には使用カードよりコストの高いカードとの交換を狙ってテンポアドをとっていくことを考える。例えば、無情な行動を打つのであれば、相手の1マナクリーチャーに打つよりは3マナクリーチャーに打つことに主眼を置く。こちらは余った1マナでクリーチャーを展開し、これを重ねることで一方的に盤面を形成していき、先にクロックでライフを削りきるというのが理想ムーブとなる。

 

カウンターの打ち方について例を挙げる。

対赤単戦、こちらは後攻1T遺跡ガニをプレイした。続く2T相手は2マナ起こしてパスしてきたため、砕骨の巨人の出来事、踏みつけを構えていることが想定される。こちらはアンタップインの黒マナを置き、湖での水難を打つ用意ができた。ここで相手がこちらのフェイスに向けて打った踏みつけを水難でカウンターするのか、ということが争点となる。

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前提として、2マナ:2マナのトレードなので、ライフ2点を浮かせるとともに相手の巨人本体を消すことができると考えれば踏みつけをカウンターする価値はある。しかし、これをカウンターすればマナを寝かせた状態で相手の3Tを迎えることになる。すると相手がプレイしてきた3マナクリーチャーを通さざるを得ず、こちらの後攻3Tはこのクリーチャーを対処するターンとして行動が制限されてしまう。

一方、踏みつけを通した場合は、水難を3マナクリーチャーに対するカウンターとして運用することができる。砕骨の巨人をカウンターするのであれば、こちらのライフを2削るために計5マナ+カード1枚使わせることができ、かつ後攻3Tを攻守逆転の起点として動くこともできそうだ。こちらの選択の方がテンポアドバンテージ上得をしていると言える。対アグロ戦でライフを守る価値が高いということを差し引いても、踏みつけは通したほうがその後の動きがスムーズになりやすいだろう。

何を通して何を打ち消さなければならないのかというセンスは、場数を踏んで身につけていく部分が大きいが、事前にリストを見比べて、何をどのカードで返すのか予め決めておくというのがひとつ効果的な練習方法としてあげられるかもしれない。手札のカードで代用した場合、本来使うべきだったカードは別の使い道があるのかということを確かめていくと、組み立てなければならないゲームプランが徐々に見えてくるはずだ。

 

ディミーアローグは、こういった小技を披露できる機会が多いデッキだと感じる。除去やカウンターなど受けのカードを使って攻めの起点を作るいい練習ができる。

トークンの除去にカードを消費するのはディスアドバンテージだというような感覚は、このデッキのみならず他のデッキに広く応用できる考え方だ。基本の見直しに添えるものさしとしても重宝するだろう。

 

私がミシック到達からメタゲームチャレンジ完走まで使用していたリストは、このリンクのリストを少し調整したものだ。非常に完成度が高く、シーズンを跨いだカルドハイム環境でも数枚の入れ替えのみで変わらず使用されている。当時の環境はグルールとローグの2強環境だったということで、メインはクリーチャー主体のデッキを意識して調整されている。サイド後は記事に書いてあるとおり、心を一つにと合わせて活躍機会の少ないカードを抜き、よりクリティカルなカードを投入すれば簡単に形になる。Bo3入門デッキとしてもおすすめできるデッキだと思っている。