ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

謎のゲーム Magic Spellslingers

先日、Magic: The GatheringのIPを使用した新DCG、Magic Spellslingersのリリース情報をSNSにて得た。公式からのプロモーションが全く目に入らずなんとなく怪しさを覚えたが、Hearthstoneライクな新DCGらしい。MTGのデジタル化は既にMOとMTGAによって済んでおり、改めてDCGをリリースする必要性に疑問を覚えたことも怪しさを助長した。だが、私が親交のあるコアカードゲーマーが面白いとレビューしていることから、どのようなゲームなのか少し興味が湧いたため私も触ってみることにした。この記事では、数時間触った時点で抱いている第一印象のようなものを書き記していきたい。

ガワがMTGということで、基本的な用語はMTGのものを使っていくが、場合によっては複数のDCGの用語が混在する。可読性が低くなるだろうことを先に断っておく。

 

 

雑感

ゲームの印象は、「MTGのキャラクターが登場するHearthstoneのようなゲーム」という表現と全く同じものだった。類似点と相違点を表にでもまとめれば攻略記事っぽくなるのかもしれないが、あくまで感想を書くことが目的なので、それらの中で印象に残った点について述べていく。

MTGと後発のDCGを差別化する大きな要因は、カードタイプについてふたつあると思っている。土地とインスタントだ。

土地システムに関しては、MTGの要素が完全に撤廃され、後発DCGのものがそのまま採用されている。毎ターン自動でマナが増えていくシステムだ。先後問題に対応するためのハンデはHearthstoneと同様で、後手に一度だけ使えるマナひとつとカード一枚が与えられる。MTGでは後手にカード一枚が与えられるのみで、その理由はカードアドバンテージの価値が高いゲームであるということが考えられる。この推測は実際のゲーム体験にも即しており、個人的にはMTGのゲーム性の方が性に合っている。そのため、テンポゲームに寄っていることが窺えるテンポラリーマナ(コイン)の配布は、DCGに寄せたシステムを採用している以上当然のことながら、少しだけがっかりさせられる要素だった。

インスタントに関しては、Hearthstoneの「秘策」に酷似したシステムが採用されている。「罠」と呼ばれるそれは、予め必要マナを支払い、カード毎に設定された発動条件を満たした時に自動で発動するというものだ。罠を予約するためのマナの支払いは、罠が発動するまで相手に見えない。秘策との違いはこの辺りにあり、罠の警戒は浮いたマナを見てしなければならない。また、秘策の発動タイミングは完全に相手依存だが、罠はバットリ系であればメイン2で張ってからターンを渡すことで、任意のコンバットで起動させることができる(フェイズ感はMTGと近く、メイン1、戦闘、メイン2がある)。とはいえ、相手に戦闘をスキップされると罠は空振る為、結局相手依存と言えばそこまでだが。

 

ここまでは、後発DCGに寄ったシステムに関する内容に触れた。ここでは、MTGを彷彿とさせるシステムについて述べる。それは、ブロック型の戦闘だ。

Hearthstoneやその後続DCGの多くは、攻撃側が攻撃対象を自由に選ぶことができる。しかし、Magic Spellslingersでは攻撃側がアタッカーを指定した後、防御側がブロック先を指定することができる。ゲームテンポは悪くなるが、Hearthstone系DCGが抱えがちな攻防の強弱問題は緩和される。

ブロック型の戦闘システムにより緩和される攻め手側強すぎ問題だが、別の問題で悪化しているようにも感じる。それは、タップという概念がないせいで全てのクリーチャーが警戒持ちになっており、アタックのリスクが小さいことだ。防御側からすればチャンプせずに攻撃を通したところで返しは結局チャンプアタックなので、アタックし得、通し損の関係になっている。チャンプブロックを強要させられるストレスが大きいので、なんらかのブレイクスルーが生まれることに期待したい。

アタック側のリスクの小ささは、マルチブロックがないことからも感じさせられる。DCGの利点であるダメージ保存が採用されているためシングルブロックのみでもゲームにはなるが、アタックは非常に簡単に感じる。ゲーム自体はサクサク進むため悪いことではないが、やはり駆け引きの要素は薄れているように思う。

 

まとめ

ぱっと見で抱いた感想はこのような感じで、非常に遊びやすくなったMTG、あるいはルール変更を施したHearthstoneという印象を受けた。もちろんリリース初期のゲームであるため現在提示されているのは基本ルールに過ぎず、今後のアップデートによりこのゲームの色が現れてくるのだろう。しかし、私にとってはどのDCGも似たようなもので、続けるかどうかは周りのプレイヤーに依存することになると思う。現状羽振りも悪くなく、ゲームの面白みを感じることもできたため私の周りのカードゲーマーを長く惹きつけてくれることを期待したい。

もしこのゲームが気になっている人がいたら、ぜひ触ってみてほしいと思う。よく「このゲームは面白くないから触るだけ時間の無駄だ」みたいな主張が「善意」で発信されているのを目にするが、面白くないと感じたのはそのレビュワー当人の話であり、さらに面白くないゲームに費やした時間を無駄と捉えるかは考え方次第であると私は思っている。どのゲームでも同じだが、カードゲームに関するレビューにはまず間違いなくバイアスがかかっているため、それらに振り回されず自分の感性に従うのが最もアドバンテージを得られる選択肢だ。