ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

Tokai LSS158SEB

前回の記事では、購入したEpiphoneのLes Paul Specialについて取り上げた。Gibsonの廉価版メーカーのような位置づけながらコストパフォーマンスは優れているようで、近年のモデルも評判がいい。特に問題がなければそのまま使ってみようと思っていたのだが、諸般の理由により納得することができなかったため、後継機探しを続けることにした。見つかった後も、レギュラーチューニング用のギターが一本あると便利だし、パーツをアレンジしてみたい欲求もあるため、お試し用のギターが一本あると心強い。売りに出す選択肢は選ばないことにした。

このような経緯から、毎日Epiphoneのスペシャルを弾きながらも他メーカーのスペシャルタイプを探し続けていた。Les Paul SpecialのTV Yellow系の色は国内で非常に人気が高く、新品は疎か中古品ですらそれほど数が出回っていないため、新品を探すのは困難を極めた。

そんな折、ついに探していた条件に合致する個体を見つけることになる。明け方に目が覚め、ぼんやりしながらデジマートでレスポールタイプの新品のギターを眺めていたところ、黄色いスペシャルの画像が目に飛び込んできた。それがLSS158SEBだった。

SEBというのは、Tokaiの独自のボディ構造の名称で、通常の横方向にカットした木材の間に縦方向にカットした木材を挟むという構造になっている。ピアノの構造から着想を得た、音の伝達効率に着目したつくりらしい。

音の鳴りは通常モデルと比較していい方向へ変化することが想定されるが、それがレスポールの音から遠のくことは懸念点として容易に想定された。しかし、私がレスポールスペシャルに求めるのはあくまでBUMP OF CHICKENの音であり、必ずしもGibsonの本物と同じ音である必要はない。近年青く再塗装されたTokaiのギターが使用されている楽曲は、確認できるだけでトーチ、ハルジオン、fireflyがある。これらの楽曲に近い音が出せるなら、本家同様の音が出せず残念どころかむしろ嬉しい。

というわけで、ページを開いた瞬間からこのギターを購入せずにはいられないと思った。とはいえ高額な買い物になるため、念のためスペックを見たところ、既に交換が必要だと分かっていたブリッジの他に、ペグ、トグルスイッチノブ及びコントロールノブを装飾的な意味で交換しなければならないことが分かった。少し悩んだが、この機を逃せば次にまたTokaiのLSS SYWに出会えるのがいつになるか分からないと思い、パーツに関してはなんとかなるだろうと購入を決めた。

届いたギターがこれだ。一目見た瞬間その美しさに目を奪われた。Epiphoneのような濃い黄色ベタ塗りよりも、薄いラッカー塗装で杢目が見えている方が好みだ。Epiphoneのものに感じた細部への違和感も、この個体には全く問題が見られなかった。

握ってみた感触は、比較的軽く、ネックも細い。これまで重くネックの太いオールドタイプのギターしか触っていなかったため私の感覚には偏りがあるが、それらに比べてかなり弾きやすい。

肝心の音は、やはり全く違って聞こえた。音の粒がはっきりしていて抜けがよく、サステインも感動するくらい伸びやかだった。GibsonのStandardと比較してノイズを全く感じないのも驚いた。恐らく導電塗料が塗られている影響で、Tokaiの細やかな配慮に感服する思いだった。

このギターを購入した後に、本家GibsonレギュラーラインのLes Paul Specialを見つけたのだが、TokaiのLSSを購入していてよかったと思えるクオリティだった。ベストに近い選択をしたと思っているGibsonのLes Paul Standard '50sよりも満足度が高い。試奏を重ねた訳でもないので個体差の影響は分からないが、国産ギターの真髄に触れたような気がしている。

しかし、後悔している点もある。それはセミオーダーをしなかったことだ。当時は存在を知らなかったため仕方なかった部分もあるが、事前に東海楽器についてもう少し調べていればセミオーダーシステムに辿り着いていたかもしれない。そうすれば、ペグやノブ類、ブリッジ、塗装まで自分好みの状態で作成してもらうことができただろう。納品までかなりの期間を要するようだが、ショップにいつ並ぶか分からないギターを待つよりははるかに安心して待っていられる。

現時点ではレスポールタイプのギターはもう購入する予定がないが、機会があったらスペシャルのブルーバーストのようなギターをオーダーしてみたい。