ハースストーン Tips

A Note on the Hearth

ハースストーンプレイヤーの備忘録

ヒストリック環境の多様性

先日、MTGトッププレイヤーの八十岡翔太さんの誕生日会ということで、有名MTGプレイヤーを招待してヤソさんが対談する様子がヤソさんのTwitchチャンネルで配信された。招待者の世代は多岐に渡り、競技シーンベースで面白くも実のある話ばかりが展開されているので、興味のある方はぜひアーカイブを見てみてほしい。

この記事では、この配信で語られたことを取り上げて書き進めたいと思う。全編は10時間にも及ぶ膨大な内容となっており、全てを拾うことはとても敵わないため内容を抜粋したい。今回は、私が大ファンである原根健太さんとの対談からの一部分を取り上げる。

上のリンクから原根さんの対談へと飛ぶことができる。24分あたりからの数十秒で話される話題について掘り下げたい。

 

"拡張のローテーションにより多くのプレイヤーがスタンダードを離れるだろう。それはスタンダードを支えていた屈指のパワーカードを数多く抱えるエルドレインが落ちるためだ。しかし、この拡張は必ずしも下環境で通用するほどのパワーがあるわけではないため、下環境参入のきっかけにはなり得ないだろう。"

といった内容がリンク部分以前で話されている。議題はリンク部分からの話題で、下環境ではファンデッキでもある程度戦えるためこれらが一定数存在しているが、スタンダードでは対照的に全くいない、という部分だ。上環境はプールの狭さからできることが限られるのは当然のこととして、他のDCGではしばしば下環境であっても特定のデッキが蔓延るという現象が起こっているのに、MTGAではこの傾向が薄いという話は興味深い。以下、このことについて考えていく。

これは、ヤソさんが強いデッキが強いデッキであるための条件について答えているインタビュー記事だ。Twitterでも似たようなことを呟いていたのだが、いつのものだったか忘れてしまったためこちらの記事を引用した。

  • 返されないぶん回りムーブを内蔵する
  • 弱点が少ない
  • 安定している
  • カード単体のパワーが高い

Twitterでは、これらのうち複数の要素を持つデッキがTier1になり得る、という説明をしていたように思う。

配信内で例に挙げられているエルフ、クレリック、ヴァンパイアデッキについてそれぞれ条件と照らし合わせてみたい。

 

エルフは、マナクリーチャーを使ってマナをスキップし、AoEが間に合わない段階で大量展開することでライフを削りきるプランがある。これは上で言うぶん回りムーブの類だ。

f:id:stelmosfire:20210816214432p:plainf:id:stelmosfire:20210816214449p:plain

 

クレリックは、恐らくセレズニアエンジェルとも呼ばれるデッキのことだろう。

天使やクレリックを召喚したときにライフをゲインできる効果を使い、ライフが一定値以上になったときのボーナス効果を使って圧倒的な盤面を作ることを目指すデッキだ。

マナスキップ手段が乏しい分エルフより爆発力は劣るが、ゲインできるため対アグロ性能は高く、スタッツボーナスによって赤の火力除去圏外に逃げることもできる、なかなかパワーのあるデッキだ。要素としては、ぶん回りに加え、勝ち筋が多いことによる弱点の少なさ、安定性を持っていると思う。

f:id:stelmosfire:20210816215304p:plainf:id:stelmosfire:20210816214449p:plain

 

ヴァンパイアは、吸血鬼種族を持つクリーチャーをかき集めた黒単色の部族デッキだ。

アグロデッキであることに加え、単色であるため色事故がなく、ドローソースもいくらかあるため息切れに耐性がある。安定性と、カード単体のパワーが高いという要素をもつことになるだろう。

f:id:stelmosfire:20210816220129p:plainf:id:stelmosfire:20210816220146p:plain

 

どれも強いデッキであるための要素は持っているが、トップティアに君臨するためにはもう一息といったデッキ達だ。噛み合えばそこそこ勝てる、という評価には頷ける。

 

この中でメタを回すとすれば、クレリックが最も強いデッキになると思う。展開一辺倒ではなく、除去があり、飛行クリーチャーによって一方的に殴ることもできるからだ。

しかし、これらのデッキの魅力は強さだけではないため、環境は必ずしもクレリック一色には染まらないだろう。例えば、部族にフィーチャーしたデッキであることが魅力の一つとして挙げられる。プレイヤーの中には、エルフファンや吸血鬼ファンがおり、これらの間のシナジーを利用して戦うことに楽しみを見出す者もいる。デッキの強さだけでなくカラーやカードタイプにアイデンティティを見出すことは、環境に存在するデッキの多様化に貢献する。

 興味深いのは、クリーチャーに種族を与えた目的は、デザインコードとしての役割を持たせるためであろうことだ。あるカードによって特定のクリーチャーをサーチする、特定のクリーチャー同士が集まることでマナを出す力、治癒させる能力が増大する、といったメカニズムを作りたいとする。これらをコードによって管理すると、それぞれ竜呼びがドラゴンを召喚する、エルフが集まることで森の力が強まりマナ量が増える、僧侶が集うことで治癒力が高まりライフゲイン量が増える、といった形にできる。このように種族には、効果に対応したコードをイメージとして便宜的に当てはめている節がある。こうやって体系化することで、カードデザインの負担を軽減したり、デザイナーズデッキとしての管理を容易にしたりする効果が期待できるだろう。

開発の利便性のためにカードに付与した属性が、しばしばプレイヤーにゲームをプレイする動機を与えているのはとても面白い。MTGAは、他のDCGに比べクリーチャーの持つ種族やストーリー性などゲームの背景部分に興味を持たせるのが非常にうまい。こういった、キャラクターの強さやゲーム体験ではない奥行きに付加価値を持たせることは、案外飽きの来ない環境作りに寄与するのかもしれない。

 

あるいは、研究対象としての消費からプレイヤーの興味を反らすのではなく、そもそも別のニーズに対して訴求している可能性がある。背景世界を活かしたデッキ創造による自己表現は、この記事に書いてあるジョニーが求めているものらしい。これは、愚直に勝利を追求するスパイクとは異なるニーズだ。

この記事の分類はとても面白いので、目を通しておいて損はない。誤解したくないのは、記事にも書いてあるとおりこれはプレイヤーのニーズを分類したものであって、プレイヤーそのものを分類したものではないということだ。プレイヤーははるかに複雑な精神活動を経てゲームプレイに至るため、相反する要素を併せ持つ場合も往々にしてある。

 

DCGの下環境の多様性に関して、そのファクターとして今回はゲームデザインの一部分を取り上げた。私としては、プレイヤーの性質やゲームシステムがメタゲームに及ぼす影響も小さくないと思っている。この辺りについてもいつか書き起こしたいが、現時点では私の知見が浅く記事に起こすには抽象的になりすぎる虞がある。幸い調べれば判断材料は転がっているため、これからの自身の体験を交えながら噛み砕いていきたい。

 

ディミーアローグとの決別

ゼンディカー末期から現在まで、スタンダード環境をディミーアローグ一本で走り抜いた。期間にしておよそ8ヶ月だ。この間、創成期を除いて万年tier2のポジションをキープし続けたこのデッキとも、2ヶ月後の新拡張と同時に訪れるローテーションとともにお別れすることになる。このデッキは私がMtGを始めてから最初に作成した環境デッキのひとつであり、思い入れも強いため、シーズン毎のリストの変遷を見ながらこのデッキとの思い出を振り返っていきたい。

 

 ゼンディカー後期

f:id:stelmosfire:20210724012420p:plain



 私が握ってきた数世代に渡るローグのリストの中で、特に思い入れのあるリストだ。

このリストでゼンディカー後期のBo3ラダーを登り、ミシック直前までたどり着いた。その後、カルドハイム環境初日に流行ったアブザンヨーリオンをカモることに成功し、構築初ミシックを達成した。

そのあと開催されたメタゲームチャレンジでは、このリストで4回ほど挑戦したところ7勝を達成することに成功している。

この時期のリストの特徴は、凪魔道師の威圧が採用されていることだ。当時はグルールや緑単フードといったミッドレンジ寄りのクリーチャーデッキが環境に無視できない数存在し、恋煩いの野獣のような生き物に触る手段の搭載が必須だった。このカードをその枠に充てれば、除去とともにローグに足りない壁の役割を対象に任せることができるため、今度は相手がこのブロッカーの突破に頭を悩ませることになる。パワーカードであったため2枚採用のリストも多かったが、効果が対クリーチャーデッキの場合のみに限られる、ゲームプラン的に青3の用意が厳しい場合がある、使用前に相手の墓地が肥えている必要がある、といった活躍するための条件が気になったため私は1枚採用に抑えていたようだ。

2枚にした場合、代わりに抜くカードがマーフォークの風泥棒だったことも威圧1枚差しを選択した要因だ。風泥棒は、対アグロでチャンプブロッカーに回してもアド損せず、対コントロールではクロック源に回すことができる、非常に小回りの利くクリーチャーだ。

当時はグルールアグロをメタる事が大前提となる環境で、このマッチでは1/1が何もできないサイズであることと、チャンプブロックという行為がトランプルに弱く、エンバレスの宝剣があちこちから飛んでくる当時のメタでは風泥棒の役割は薄いとの判断だったのかもしれない。しかし、ソーサリーのためにクリーチャーを抜くという選択は私にはできなかったため、風泥棒4積みは死守した。

サイドボードだが、スカイクレイブの影、神秘の論争は、どちらもメインから抜くカードを作れなかったためフル投入するゲームはほとんどなかった。論争を減らして凪魔道師の威圧を増やすのはありだったと思う。

ちなみに、このリストの前にディミーアローグのプロトタイプが存在するのだが、リストを保存していなかったせいで確認が取れない。心を一つにと無礼の罰が入っておらず、取り除きと神秘の論争になっているリストだったように思う。このデッキは、物語への没入という明確に引きたいカードが存在するため、ドローの価値が高い。心を一つにの採用によりデッキがスムーズに回るようになった。

 

カルドハイム前期

f:id:stelmosfire:20210724012450p:plain



カルドハイムリリースから少し経った頃のリストだ。アガディームの覚醒は入れ得カードだと思っていたため、凪魔道師の威圧が抜けた今なおさら2積みになっている理由に首をかしげた覚えがある。

メインの大きな変更点は血の長の乾きが取り除きに変わっていることだ。カルドハイムから氷雪デッキが誕生し、単色アグロにはフラッド受けとして不詳の安息地、俗にいうミシュラランドが広く採用されるようになった。このカードへの対応はインスタントタイミングに限られるため、ソーサリーである乾きが抜けた形だろう。

サイドには、待望のAoE激しい恐怖と、-修正による疑似除去ができる死の重みが新たに加えられている。いずれも白単の神聖刃への回答になり得る、対アグロ用カードといった立ち位置だ。このころはヒストリックを触っていた関係で、スタンはBo1をメインに遊んでいた。そのためサイドボードの使い勝手は分からない。

 

カルドハイム中期

f:id:stelmosfire:20210724012508p:plain

このリストは、カルドハイムシーズン中旬にArne HuschenbethがカルドハイムCSを優勝したあとに更新したリストである。彼が優勝したときに使っていたリストがディミーアローグで、アグロデッキに当たるリスクを背負いながらこのデッキを選択し、見事なプレイで優勝までたどり着いた彼の姿にいたく感銘を受けた。

はっきり覚えていないが、リストは彼のものに近いが彼のものではないものを選択したように思う。欺瞞の神殿3、ゼイゴスのトライオーム3は私のプレイスタイルに合っていない印象を受けたが、ごく稀にサイクリングを打つことがあるためこの配分でよさそうな感じもする。

このデッキもBo1でのプレイが主だが、先日行われたメタゲームチャレンジのために少しBo3を触っている。激しい恐怖の枚数と魂標ランタンの要否は怪しいが、他には特に違和感なく回すことができた。メタゲームチャレンジ本番も、新拡張で強化されたことにより数を増やした緑単、ナヤウィノータ相手にも十分戦うことができ、一発で完走することに成功した。

このリストは、ロークスワイン城がいい味を出している。効果の起動は主にロングゲームとなる低速デッキ相手だ。ライフを詰められる展開にはならないためデメリットはほとんど気にならない。

マルチカラーランドとの入れ替え枠なので、タップイン前提で考えると、事前に沼が出ているだけでアンタップインに変えることができる上振れ要素を持った土地になる。アグロ相手はテンポが命なので、1マナ伸びるかの差は大きい。マルチカラーではなく黒単色なので青が出ないが、もともと青に不足はないため問題ない。

 

これらのリストはランクマッチで試しているわけではなく、イベント戦モードで使用している。ランクマッチよりも大きな生産性を期待できるからだ。メタが異なっている可能性はあるが、対戦デッキのパワー不足はあまり感じない。資産が集まってきてコレクション効率を気にする必要がなくなってきたら、勝率ベースからランク、順位ベースの評価方法に切り替えてみるのも面白そうだ。印象が変わる可能性がある。

 

これから

あと2ヶ月はローグで遊ぶことができるが、そろそろローテーション後のことを考え始めてもいい頃合いかもしれない。

現環境ベースで考えると、イゼットテンポが一番気になっているデッキだ。カラーリングも好きだし、主力にドラゴンを置いているところも好感を持てる。

MtGAを始める前に一度マジックに興味を持ったことがあったのだが、そのときの一大勢力にイゼットドレイクがいた。戦えるデッキかつ使用カードのレアリティが低いということで、入門者に人気があったようだ。あの頃のイゼットに憧れを持っているため、ここで一度イゼットカラーを触ってみてもいいだろう。

赤の火力と青の打ち消し、ドローというコンセプトは、対応力が高く私好みの戦術が取れる。現環境では既に猛威を振るっているデッキのひとつであるため、ローテーション後を見据えながら現環境で一足先に楽しむか、ローテーション後の新拡張まで含めてじっくり考えてワイルドカードの投入先を決めるか、その選択をじっくり時間をかけて決断したい。

MTGA記6

先日、最新弾であるフォーゴトン・レルム探訪が発売された。forgottenをこのようにカタカナ表記することに果てしなく違和感を感じる。カード名にも英名をそのままカタカナ表記したものが多いため、固有名詞であるということなのだろう。

今シーズンは、昨シーズンリミテッドで破産してしまい心に負った傷跡があまりに大きかったため、リミテッドに潜ることにとてつもなく慎重になっている。まだ新環境の話ができるほど新カードを楽しんでいないため、昨シーズンの話を書いていこうと思う。

 

昨シーズンのテーマとなる拡張、ストリクスヘイヴンは十二分に満足感を得られる拡張だった。目玉ギミックの履修:講義は、リミテッドのゲーム体験はもちろんピックを何倍も奥深いものにしてくれるギミックで、この拡張のリミテが私の過去一遊んだものになった。

もう一つの特徴は、スタン落ち済みのパワーカードの中から選りすぐりのものがミスティカルアーカイブとして再録されていることだ。私は1年前からMtGAでマジックデビューした新参者であるため、過去のカードのことは全く知らない。歴戦のプレイヤーがこぞって話題に挙げるあのカード達をアリーナのヒストリックでもプレイできるというのは、当時を追体験できるような心地でとてもわくわくした。

現状無課金で遊んではいるが、資産管理能力は人並以上あると思っているため、カルドハイム辺りからヒストリックも触り始めた。ラクドスアルカニストから入り、当時最強だったジャンドフードにたどり着いた。ジャンドフードは基本的に猫かまどパッケージを使いアドバンテージを稼いで勝つデッキなので、墓地対策などでここをメタられるのに弱い。しかし、少しメタられたくらいでは相性差までは覆らず、そのままぶち抜いてしまうほどのパワーがこのデッキにはあった。ドローエンジンも豊富にあり、再現性の高いゲームプランを組むことができるのも気に入った理由の一つだ。

f:id:stelmosfire:20210714211248p:plainf:id:stelmosfire:20210714211313p:plainf:id:stelmosfire:20210714211355p:plain

 

ストリクスヘイヴン発売後は、専らジェスカイコントロールを握っていた。

この拡張で初登場した表現の反復に加え、ヒストリックでは記憶の欠落、渦巻く知識、信仰無き物漁りといった赤、青のカードが再録されたため、イゼットカラーのデッキが猛威を振るった。ジェスカイコンはここに白を加え、稲妻の螺旋や審判の日を組み込み、隙のないコントロールデッキに仕上がっている。

f:id:stelmosfire:20210714212731p:plainf:id:stelmosfire:20210714212820p:plainf:id:stelmosfire:20210714212759p:plain

f:id:stelmosfire:20210714212711p:plainf:id:stelmosfire:20210714212916p:plainf:id:stelmosfire:20210714213130p:plain

サンプルリスト

 

このデッキは、中盤まで適宜除去や打ち消しを使って凌ぎ、4tのラスから5tテフェリーのプレイを契機に攻勢へと転じ、サメ台風を使ってフィニッシュを狙う形にデザインされている。デッキの性質上ランプデッキのようなマストカウンターカードを連打してくるデッキに弱いが、攻め札のあるコントロールという比較的広い相手を見ることのできるデッキタイプで、相手のプランに合わせて柔軟に対応できるのが強みだ。

f:id:stelmosfire:20210714215320p:plainf:id:stelmosfire:20210714215340p:plainf:id:stelmosfire:20210714225919p:plain

ちなみにこのデッキ、ミラーマッチがとても面白い。カードゲームは往々にして、自分と相手が同じ土俵に立っていることを求められる場面がある。打ち消しなんて卑怯だ、ハンデスなんてずるい、正々堂々地上で戦え、といった具合だ。こういった要望は、同じ性質のカードを使っているミラーマッチによって解消される。しかし、デッキに同じカードしか入っていない都合、勝敗を分ける要因が少なくなり、しばしば引きに依存してしまう、もしくはそう感じやすいという現象が起こる。この繊細なバランスが、このデッキのミラーではだいぶ取れているように思った。

 

ゲームは、やはりテフェリーを巡って展開される。このカードは、ドビンの拒否権の対象として最優先に挙がるカードである。中盤以降のタップアウトはテフェリーを通す隙を見せてしまうことになるので、常に2マナ起こした状態でゲームを進めていく。テフェリーのプレイも、よほどリスクを取らなければならないくらい圧されている場合を除き、記憶の欠落1枚は返すことのできる7t以降を目安にする。

ドビンの拒否権は、テフェリーを通す攻めのプレイよりも、相手の攻め札を通さない守りの場面でこそ真価を発揮するということは意識しておきたい。テフェリーへの打ち消しに対する打ち消しに使うのは、そのカウンターこそ通らないものの、2枚目の打ち消しを重ねてテフェリーへと打たれた場合、ドビンの拒否権が相手の2マナとの交換で終わってしまうためだ。対して、相手の能動的なアクションに合わせた場合は、確実にターゲットとの交換になる。この差は大きい。

テフェリーが通れば即ち決着かというとそんなこともない。捲るキーカードはサメ台風である。サイズ4/4以上は途端に触りづらくなるため、万が一相手のテフェリーを通してしまった場合は、サメと稲妻のらせんを絡めるといったプレイでテフェリーを落とすことを目標にする。

ナーセットは、一見脅威だがこれ一枚でゲームが終わるというほどではない。解決も稲妻のらせん1枚で済むため、ここに貴重な打ち消しを浪費することのないよう、慎重にゲームプランを組み立てたい。なお、結末が概ね見え始めている終盤ではこの限りではない。テフェリーかサメのハードキャストあたりを通せていれば、かなり有利な展開に持ち運べているはずだ。そのため、見えないテフェリーを徹底的にケアするといった及び腰の構えより、ナーセットからリソースを補充されることを防ぐとともに、ドローをナーセットで固定するといった攻めの姿勢を見せてもいい段階になっているだろう。

ちなみに、ナーセット関連でひとつ小技がある。某配信者の受け売りだが、このマッチではサメ台風をx=1以下ではプレイしない。理由は、アタックが2以上あればナーセットを叩いたときに追加のサーチを阻害することができるからだ。このような微細なアドバンテージの積み重ねが、試行回数を重ねるにつれてゲームの勝敗に結果として表れることになるだろう。

 

3色デッキということもあり、色事故を不安に思いながら触り始めたのだが、杞憂だった。ラスのための白白が出ないことが稀にあるが、他に目立った土地事故は起こらない。ナーセットのマイナスを使わずにそのまま置くのが強かったり、テフェリーのプラスマイナスの選択が勝敗を分けたりと、意志決定の機会が多いのもこのデッキの特徴だと思っている。今後の新弾の追加でこのデッキの立ち位置がどう変わるかは分からないが、資産にある程度余裕があれば触ってみても損にならないだろうと言えるくらいには面白いデッキだと思っている。

ヒストリックのイベント戦報酬はヒストリックカード限定であるという性質上、ひとつ下環境のデッキを持っておけば好きなときに下のカードを集めることができるようになる。ちまちま集めることに意味があるのかと疑問に思ってしまうくらい下環境のプールは広いが、小さなアドバンテージに鋭い嗅覚をもって飛びつくのがカードゲーマーだろう。いつの日かカードをコンプリートする日が来ることを夢見て日々カード収集に励みたい。

ディベート

カードゲーム、特にDCGは、サービス開始から時間が経つにつれて盤面のやり取りメインの分かりやすいゲーム性から離れ、複雑で直感的でない方向に進んでいく傾向にあることはほとんどのプレイヤーが実体験を通じて感じていることと思う。カードプールの拡がりとともにカード自体の機能も増えていき、実現できることがどんどん増えてくる。そうすると、当初は実装されていなかったギミックを持つカードが次第に台頭し、それまでプレイヤーが常識として持っていた、規則に対する固定観念を歪ませる。

当初のゲーム性を好んでゲームを開始したプレイヤーは、歪んでしまった規則に違和感を感じ、なんとか原点回帰できないものかと思案する。この流れの中で、私がやりとりのあるカードゲームプレイヤーの一人から出てきた考察に、「ランダム性の高いゲーム性になるのは、ランダム性の高いカードを選択し採用するプレイヤー側の責任」といった趣旨のものがあった。これは、私も以前考えたことのある興味深いテーマだった。この話を聞いたおかげでまた思い出すことができたので、これを機に一度私の考えをまとめておきたい。

 

私個人としては、採用カードの内容に関してはプレイヤーの責ではないと考えている。これは、プレイヤーのカード採用の決定プロセスに依る。

 

ゲーム開始からのぱっと思いつく流れをおおまかに書くと、まずプレイヤーは余暇の充て先を探す。諸々の検討を経てゲームを遊ぶことにたどり着く。ゲームタイトルの選択はそれが面白いかどうかが大きな決定要因となるはずだ。勝ち負けのつくオンライン対戦ゲームの場合は、勝つための試行錯誤を勝利という形で評価されるのが一番分かりやすく面白いと感じられる要素だろう。数多の対戦ゲームの中から(将来的な可能性含め)勝てそうなものを選び、勝利を目指す前提で為すべきことを模索するというのが一連の流れになると思う。為すべきこととは、カードゲームでいえばコレクションの拡充、デッキ構築、プールの把握、確率観の研鑽など多様なアプローチがある。

この流れはあくまで一例で、必ずしも全てのプレイヤーが同じプロセスを経てカードゲームをプレイするとは限らない。しかし、構成要素が前後するくらいで、要素自体に大きな変化はないだろうと思う。例えば、勝利という目標を省いてしまえば勝負事の大前提が崩れることになるので、この目標なしに対戦を成立させることはできない。

 

このプロセスを見れば、まずゲームに勝つことを前提として、これに縛られてカードを選択していくことになるのが分かる。すると、選ぶべきカードの選択方針は勝てるカード、つまりパワーの高いものになる。この方針によりいったんデッキの雛形は完成する。ただ、この方針でできたデッキは対戦環境のことを考慮しておらず、独りよがりな状態になっている。ここから相対的にパワーの低いカードや環境に対して役割の薄いカードを自由枠として解放し、より効果的なカードに入れ替えるというのがデッキ構築の流れだ。カードパワーを参照してコスパのいい除去呪文を入れたが、そもそも対戦相手にクリーチャー主体で攻めてくるデッキが少ないため、除去ではなく攻め札に入れ替える、といった例が分かりやすいだろうと思う。

 

ここまでの流れで、採用カードの決定に関してプレーヤーの嗜好は介入していない。強いカードをデッキに組み込むという問題を解いているに過ぎない。実際のゲームでは、採用カード間の相乗効果など、考慮すべき要素が増えるため、案外この問題は単純明快というわけではない。プレイヤーは自分の意思でカードを選択しデッキを作っているというよりも、(自分の意思で様々なカードを当てはめていきながら)答のある問に対してその答を導こうとしている、というのが私の見解だ。

『答』にたどり着くためのリスト最適化の過程にはプレイヤーの意志が介入する余地はあるだろうが、『答』に関してはそれがない。ネットの普及が進んだ現代、情報の淘汰速度はめまぐるしく、出回るリストは『答』が非常に多い。よって、出回っているリストにはプレイヤーの意志が介入していないと考える。

仮に『答』に至ったリストに環境不適応以外の問題があり、調整を加えなければならないとしたら、それは『過程』の段階のリストに戻ることになる。勝利を目指しているのもかかわらず、万全の態勢を整えて勝負に挑まないのは筋が通らないため、『答』が分かっているならそれを持ち込まないのはおかしい。このような考えから、冒頭に述べた結論と若干ずれるが、環境デッキリストの固定化はプレイヤーの責から外れていると思っている。

 

カード選択の責任の所在を明らかにし、そこをテコ入れすることによって現状を改善したい、というのが冒頭の考察の意図だろうから、プレイヤーの責でないのならいったいどこに原因があるのかについて考えてみたい。

ゲームに使うカードは、全て開発陣によってデザインされている。デザイン時にはもちろん個々のカードが環境に対してどのようなインパクトを与えるのか、ある程度の予想を持ちながら設計されている。では、好まれないカードをデザインしてしまった開発陣に責任があるのかというと、そうではないだろう。ただし、これは私の持論なので、場合によってはここに責を問えば辻褄は合うことになると思う。ゲームプレイに関して、登場人物は開発者と使用者の二人であり、この話に関してはあくまで使用者側の責任ではないという立場を貫きたい。

カードゲームの楽しみ方の一つとして、誰も思いつかないような独創的なデッキを構築し、あわよくばそれで結果を残す、という楽しみ方がある。これは、ネットによりもはや莫大な数のユーザーが一丸となって構築に励むフィールドに、わずかな数で構成される開発陣が意図的にトリックを仕掛けてゲームを世に送り出す、といった芸当は不可能に近いだろうから、意表を突く対象には開発陣さえ含まれる。つまり、『答』は偶発的に作られる場合もあるということである。誰の過失でもないものを運のせいにする、という話はよくある論法で、これをここに当てはめたいというのが私の持論だ。

開発陣が全てを意図的にデザインした環境のひとつに、デザイナーズデッキのみで構成される環境が挙げられる。この環境であれば、運営の想定外はほとんど起こりえないだろうし、調整も綿密に済ませておくことができる。しかし、プレイヤーが独創的なアイデアを以て出し抜く余地がない。これでは、創造力に価値を見出すユーザーを満足させることはできないだろう。だから、開発陣はカードプールに解釈の余地を残した状態で、ある意味未完成な状態で発表することになる。この余白部分に、目に余るほどのバグ的な挙動が見つかった場合にあとから修正を加える手段が禁止、ナーフ、制限措置である。この措置は、ユーザーが満足する状態を導くことが目的なのではなく、開発陣が理想とする環境に近づけることを目的とする手段だ。ユーザーの満足度を向上させることが理想の中に入っていればフィードバックは積極的に取り入れられるだろうが、必ずしもそうとは限らない。ここに、ユーザー開発間の大きな摩擦を生じさせる要因がある。原因の在処が曖昧な上に、集合対集合のやりとりなせいでコミュニケーションが円滑に進まない。

現状からなかなか動きが見られないのは、必ずしも怠慢による停滞が原因とは限らず、動かない大きな原因があることも少なくない。カードゲームのメタが一点で停滞する原因は、最適化ステップが完了したからで、そこに要素変更を加えず動きを求めるのはステップを後退させることを意味する。これを打開するための手段が、禁止措置などによる調整、新弾発表による要素の変更、追加である。これらは、ユーザーの理想環境の実現を手伝うものではなく、あくまで開発陣のイメージに実際のゲーム環境を近づけるためのものである、というのが私の考えだ。深掘りすれば整合性が取れない部分が出てくるかもしれないが、現状では、この解釈で特に違和感を感じている部分はない。

 

「ランダム性の高いゲーム性になるのは、ランダム性の高いカードを選択し採用するプレイヤー側の責任」

冒頭で述べればよかったが、私はこの文が「環境の固定化」、「不健全な要素の顕在化」の二つの問題で構成されていると見ている。環境の固定化に関しては上のような思考プロセスで溜飲を下げているが、二つ目の問題に触れていない。ここからは、二つ目の問題について少し考えたいと思う。

 

カードゲームデザインにおける暗黙の了解について、あるいはなぜ私がドロシーウィッチを嫌うのか | by Ryude | Medium

 

無作為はともだち | マジック:ザ・ギャザリング

 

カードゲームが運ゲーか否か、といった議論は昔から頻繁に行われていて、この答えは一番目の記事に書かれているとおり運ゲーである。

プレイヤーがゲームを始める上で受け入れている運要素は、山札順の無作為性が大部分を占める。ここにあとからランダム要素を追加することについて詳しく述べているのが二番目の記事だ。ちなみにこの記事ではユーザーが無作為要素を嫌い、プレイを避けると書いてあり、私の主張とぶつかっている。この記事は十年以上前に書かれた記事で、当時は紙のカードゲームが主流だった。対面で遊ぶゲームなので、非対面のオンラインゲームと比較したときに、勝ち負けを競うことを主眼に置くというよりも、対戦相手とのコミュニケーションツールとしての側面が強い。ゲームの性質が変化していることに相違の理由があると考えたい。

 

これらの記事に書いてあるとおり、ランダム性はそのものが不健全なのではなく、どのような使い方をされているかが問題なのである。これにはかなり大きな解釈の余地があり、細かく見ればプレイヤー毎に受け取り方も千差万別だろう。ちょうどいい程度を見つけるのは至難の業だろうが、これはユーザーによって採用の可否が選別されるのではなく、開発陣が実装段階で調整すべき課題だと思っている。しかし、この場合の正解は全てのユーザーが納得のいく加減に落ち着かせることではなく、やはり開発陣の理想とするゲーム性に近づけることが正しい。なぜなら、ゲームはユーザーの所有物ではなく、開発陣の創作物だからだ。現時点でゲーム性に違和感を感じているプレイヤーが、たまたま環境の変化ではまった場合を除き、ぼやき続けることで理想の環境を手にすることは不可能だろうと考える。

カルドハイム ディミーアローグ

私はゼンディカー環境でディミーアローグが現れて以来、ずっとこのデッキを使用している。初めてのミシック到達をこのデッキで経験し、カルドハイム環境初期に行われたメタゲームチャレンジで7勝を記録した。このゲームを始めて以降有数の思い入れあるデッキなので、現時点でのこのデッキに対する印象をまとめておきたいと思う。

 

このデッキを初心者におすすめできるデッキとして紹介されているのをしばしば見かける。私もこの考えには同意できる。なぜなら、このデッキによってアドバンテージの概念を簡単に習得することができるからだ。

 

リストから、相手の墓地の枚数を参照して強化されるカードを軸に戦うデッキであるということが分かると思う。切削効果を使って相手の墓地を肥やし、各カードをアクティベートして臨戦態勢に入る展開を作ることを目標にする。このことから分かるとおり、切削はカードの能力を起動するための手段であり、必ずしもLOを勝ち筋に据えるわけではないということは覚えておいた方がいい。特にこのデッキと対峙する時に重要な考え方で、サイドボードを使ってデッキの枚数を増やすことによって、確かにLOを遠のかせることはできる。しかし、デッキの密度の低下による安定しにくさというデメリットのほうが目立ち、結局うまく回らないままクロックで削りきられてしまうということになりかねない。主に土地枚数とスペル枚数間のアンバランスが原因だ。LO負けを嫌ってデッキを不自然に厚くするくらいなら、脱出カードを積み墓地枚数を調整することで、物語への没入湖での水難を腐らせるプランをとったほうがはるかに効果的である。

f:id:stelmosfire:20210314130019p:plainf:id:stelmosfire:20210314130057p:plain

話が逸れてしまった。

 

このデッキはクロックパーミッションと呼ばれる、ビートコントロールというデッキタイプに属するデッキだ。展開したクリーチャーをカウンタースペルで相手の除去呪文から守り、クロックでライフを削りきることを主な勝ち筋とする。

ビートコントロールの名の通り、このデッキはコントロールデッキとして振る舞うこともできる。自分より速いデッキ相手にはコントロールデッキとして立ち回ることが多く、回り方によるが基本的にこのデッキは中速以降の速度感なので、ミッドレンジもしくはそれより速いデッキに対してこのプランをとる。

リストから分かるとおり、デッキに入っているのは1:1交換を取るカードがほとんどである。カウンターや単体除去が最たる例だ。全体除去や肉厚なクリーチャーを使って複数交換を取ることによりアドバンテージを稼いで差をつけるのがコントロール側の狙いのはずだが、1:1交換しかできないデッキで果たして本当にコントロールすることができるのだろうか。

 

これを可能にする仕掛けがふたつほど用意されている。

ひとつは、切削だ。仮に60枚(正確には60から土地を除いた枚数)全てで1:1交換を続けたとしても、決着はつかない。ノーマリガンスタートの場合、後攻がデッキ切れで負けることになるだろう。これを回避するために、相手の山札を直に削ることで対処すべきカードの枚数を減らすのだ。これによって相手はリソースの総量が減少するとともに、無闇なドローにリスクが加わり、窮屈な展開を強いられることとなる。

 

もうひとつは、物語の没入である。カードを1枚使って4ドローしているので、単純計算3枚分のカード差をつけることができる。カード1枚のバリュー差ではなく、物量を活かしてコントロールするというのがこのデッキの戦略なのだ。

 これは没入のバリューで戦っているのでは、と考えたことは私もある。これには、土地を4枚引いた場合を当てはめて考えてみたい。土地4枚ではボードに及ぼす影響が皆無で、複数交換は狙えない。この場合は、デッキを圧縮してトップデッキの質を高めた点にバリューを見出すべきだと思うが、このデッキはほとんどのカードが2マナ以下で構成されている。トップデッキ一枚ではフラッドしたマナベースを十分に活かすことができないため、土地を引きすぎた没入にバリューを見出すのは困難だと考える。

上記の理由から、没入は使用ターン以降のマルチアクションを狙うために打つものであるという認識を持っておきたい。クリーチャーの展開と相手の脅威に対するカウンターでダブルアクションを構えるのは、クロックパーミッションと呼ばれるこのデッキの主要な戦術だ。

 

多くのゲームではまず4Tに物語の没入を打つことを目標においてマリガンし、ゲームプランを立てる。つまり、4Tまでに②○○のマナベースを用意することと、切削を使って相手の墓地枚数を7枚以上にしておくことを目指す。4Tに没入を引けていなかったとしても、切削が進んだ状態なら風泥棒でドローできるし、複数ドローカードである心を一つにも投入されている。これらを使って必要パーツを引きにいけるのが、このデッキの強みだと思っている。

 

 1:1交換によるアドバンテージの稼ぎ方だが、基本的には使用カードよりコストの高いカードとの交換を狙ってテンポアドをとっていくことを考える。例えば、無情な行動を打つのであれば、相手の1マナクリーチャーに打つよりは3マナクリーチャーに打つことに主眼を置く。こちらは余った1マナでクリーチャーを展開し、これを重ねることで一方的に盤面を形成していき、先にクロックでライフを削りきるというのが理想ムーブとなる。

 

カウンターの打ち方について例を挙げる。

対赤単戦、こちらは後攻1T遺跡ガニをプレイした。続く2T相手は2マナ起こしてパスしてきたため、砕骨の巨人の出来事、踏みつけを構えていることが想定される。こちらはアンタップインの黒マナを置き、湖での水難を打つ用意ができた。ここで相手がこちらのフェイスに向けて打った踏みつけを水難でカウンターするのか、ということが争点となる。

f:id:stelmosfire:20210314130217p:plainf:id:stelmosfire:20210314130339p:plain

前提として、2マナ:2マナのトレードなので、ライフ2点を浮かせるとともに相手の巨人本体を消すことができると考えれば踏みつけをカウンターする価値はある。しかし、これをカウンターすればマナを寝かせた状態で相手の3Tを迎えることになる。すると相手がプレイしてきた3マナクリーチャーを通さざるを得ず、こちらの後攻3Tはこのクリーチャーを対処するターンとして行動が制限されてしまう。

一方、踏みつけを通した場合は、水難を3マナクリーチャーに対するカウンターとして運用することができる。砕骨の巨人をカウンターするのであれば、こちらのライフを2削るために計5マナ+カード1枚使わせることができ、かつ後攻3Tを攻守逆転の起点として動くこともできそうだ。こちらの選択の方がテンポアドバンテージ上得をしていると言える。対アグロ戦でライフを守る価値が高いということを差し引いても、踏みつけは通したほうがその後の動きがスムーズになりやすいだろう。

何を通して何を打ち消さなければならないのかというセンスは、場数を踏んで身につけていく部分が大きいが、事前にリストを見比べて、何をどのカードで返すのか予め決めておくというのがひとつ効果的な練習方法としてあげられるかもしれない。手札のカードで代用した場合、本来使うべきだったカードは別の使い道があるのかということを確かめていくと、組み立てなければならないゲームプランが徐々に見えてくるはずだ。

 

ディミーアローグは、こういった小技を披露できる機会が多いデッキだと感じる。除去やカウンターなど受けのカードを使って攻めの起点を作るいい練習ができる。

トークンの除去にカードを消費するのはディスアドバンテージだというような感覚は、このデッキのみならず他のデッキに広く応用できる考え方だ。基本の見直しに添えるものさしとしても重宝するだろう。

 

私がミシック到達からメタゲームチャレンジ完走まで使用していたリストは、このリンクのリストを少し調整したものだ。非常に完成度が高く、シーズンを跨いだカルドハイム環境でも数枚の入れ替えのみで変わらず使用されている。当時の環境はグルールとローグの2強環境だったということで、メインはクリーチャー主体のデッキを意識して調整されている。サイド後は記事に書いてあるとおり、心を一つにと合わせて活躍機会の少ないカードを抜き、よりクリティカルなカードを投入すれば簡単に形になる。Bo3入門デッキとしてもおすすめできるデッキだと思っている。

大会

私がハースストーンを始めてから今年で6年目になります。スタンラダーを主な活動拠点として、折に触れ別のモードも一通り遊んできましたが、さすがにマンネリしてきた感じを否めません。もちろん、カードゲームなのですぐに環境が変わるため、極め続けることは不可能で、常に学ぶべきことで溢れています。例えるなら、勉強しなければならないことは山ほどあるのに、ペンとノートを用意して机に向かうという入り口が変わらないために、学習が億劫になってきたようなイメージだと思っています。

このような状況を打開すべく、最近は新たな刺激を求めてコミュニティ大会に参加するようになりました。私の見ていた世界が狭かっただけかもしれませんが、以前は運営に用意された環境で競うだけで、自発的に楽しみを見出すような動きは少なかったように思います。もしくはそのような動きが注目されにくい環境でした。しかし、5年の時を経たコミュニティの成熟により、運営に頼るだけでなく自分たちでよりおもしろい遊び方を発掘することができるようになってきました。近頃特に盛り上がりを感じるのがユーザー大会です。オリジナリティに満ちたルールが提案されている大会も散見され、眺めているだけでもわくわくしてきます。

今回はいくつかの大会に参加してきた現時点の私が感じていることをまとめていきたいと思います。

合わせて、私が今まで参加した大会の記録もまとめたいと思っています。参加した大会はこのブログに欠かさず記録することにしているのですが、一番最初に参加した大会だけ記録できていないのがずっと心残りでした。書き出す機会も逸してしまっていたので、ここでこじつけておぼろげな記憶を頼りに書き残したいと思います。

 

 

初心者におすすめなチーム戦大会

私はもう初心者を名乗れる時期を過ぎてしまっているため、完全に初心者プレイヤーの気持ちに寄り添うことはできません。この項を見る場合は、これを念頭に置いて読み進めてください。

 

チーム戦大会をおすすめしたい理由のひとつは、要求資産が少ない事です。

一般的な大会は、いくつかの異なるデッキを用意してゲームを複数行い、勝利数の多い方が勝者とされるルールが採用されます。このデッキを全て自分で用意しなければならないため、勝ち上がることを目的にした場合そこそこの資産を持っていることが参加の前提とされます。

一方、私が参加した3つのチーム戦大会のうち2つは、各自デッキをひとつ持ち寄って対戦する形式でした。普段から使い慣れているデッキを持ち込むこともできるので、大会のために特別カードを用意しなければならないということがなく、気軽に参加することができます。実際私も知らず知らずこの恩恵を受けていました。

 

おすすめ理由のふたつ目は、得られる経験値が膨大な量であることです。

カードゲームは、RPGのように敵を倒し一定の経験値を貰って着実にレベルが上がるというタイプのゲームではないことは周知の事実でしょう。ゲームを理解しレベルを上げるために対戦するのに、効率よくレベルを上げるためにはゲームに対する一定の理解が要求されるというジレンマをはらんだゲームです。ただ、ポケモンでいう「ふしぎなアメ」のように簡単にレベルを上げる方法もあり、そのひとつがコーチングを始めとする自分より上手いプレイヤーにアドバイスを貰うというものです。チーム戦は、このコーチングを自然に受けられる環境が整っている場であると言えます。上級者はゲームを理解するための土台となる知識をすでに持っているので、うまく吸収できれば世界が変わって見えるほどの成長を見込めます。インプット力とアウトプット力は異なる能力なので、単にゲームが上手いだけでなくコミュニケーションが上手なプレイヤーに師事するのがポイントです。うまくいけば大会に向けた事前練習の段階で既に十分な収穫が得られていることでしょう。

初心者の自分が参加すればチームの足を引っ張ってしまうのではないかという不安があるかもしれませんが、そんな心配はほとんど必要ありません。使用デッキは事前に相談しておくことができます。今までのチーム戦大会ではチーム内での観戦、会話が許可されていたため、プレイ方針に関してはメンバーと話し合って選択できますし、分からない場面があっても、メンバーの意見を求めながらプレイすることができます。本当に危惧すべきは、メンバーの意見を翻せない空気ができてしまい、プレイに自分の色が出せなくなってしまうことです。その可能性にさえ目を瞑れば、大きな成長を見込める場として重宝するでしょう。

 

デッキ構成及び出し順について

デッキを複数用意し、先に全てのデッキで勝利した方がマッチの勝者となるルール、Bo3(ベストオブスリー)コンクエストやBo5コンクエストといったものが採用されている大会には何度か参加しています。その際に、ネットで検索すれば解説が出てくる程度にメジャーな戦術を2つ試しているのですが、どちらも好成績を収めることができています。決して通用しないものではないと思っているこの2つの戦法を紹介します。

 

・Tier1編成

ラダーで環境を定義しているデッキを上から順に持ち込む構成です。単純にデッキパワーが高いため、多少の相性差も力で覆すポテンシャルを秘めています。

Bo1環境と大会のメタは必ずしも一致しませんが、ほとんど同じデッキが台頭していると考えて大丈夫です。ラダーで回し慣れたデッキを持ち込むことができる点がこの構成の魅力です。

 

難点のひとつは、奇襲性が薄いところです。環境を定義するデッキは、メタを停滞させないためにプレイヤー総出で対策されていきます。名が知れ渡った代償として、手のうちがばれた状態で対戦することを余儀なくされます。

 

一貫性のない構成になり得ることも、場合によってはデメリットとなります。

ここで、グー=ビートダウンチョキ=コンボパー=コントロールというようにデッキタイプをじゃんけんの手で例えます。Tier1編成は、グー、チョキ、パー全ての手を検討する余地のある組み方であり、使いこなすためにはゲームに対する幅広い理解が求められる構成になります。ある程度のやりこみが必要となるため、上から強いものをピックするという発想の安直さからは想像のつかない難しさをはらんでいます。

 

・メタ編成

特定のデッキタイプをターゲットに、それに有利のついているデッキで固める編成です。相手が出してくる手の中にパーがあると考えられるなら、こちらの手を全てチョキで構成し、パーを全抜きすることを狙うという戦術をとります。これは、全てのデッキで勝つまでマッチの勝利が確定しないというBo*コンクエストルールの性質を活かした戦略で、グー、グー、パーという一見不利な構成をしている相手にも勝てるポテンシャルがあります。

この構成はどれも似たようなデッキタイプであるため、ある程度練度を共有できる点がメリットとして挙げられます。また、出し順についてもさほど結果には影響しないため、本番で使う思考のリソースを温存できる点も気に入っています。

 

この編成を選択するデメリットには、相手の編成に仮想敵がいなかった場合に厳しいマッチになることが想定される点があります。全てグーの編成で全てパーの相手に当たってしまう場合はもちろん、グー、グー、パーといった手を用意してきた相手にもデッキ相性だけで見れば不利がついてしまいます。カードゲームは相性だけで結果が出るわけではないので、たとえあいこであっても練度差など他の要素を使い有利に立ち回ることができるとはいえ、ゲームスタート時点で不利を背負うのは大きなリスクです。メタをしっかり読み切る力が求められます。

 

デッキを出す順番

この記事及び記事内のリンク先にわかりやすく簡潔にまとめられています。

私は、シャドウバースのBo3に打ち込んでいた時期に一度投げ順について考えたのですが、順番は結果に影響しないという結論に至りました。あれは確率論に基づいた考え方だったようです。

心理戦に関しては、この記事が非常に参考になります。

答えは提示されていますが、私は些細な意志決定を自分自身で行い、その結果についてあーだこーだするのがカードゲームの醍醐味だと考えている節があるので、必ずしもこの択を選び続ける必要はないと思います。

 

デッキの出し方に関して現在は少し違った考え方を持っていて、最も多く不利のついているデッキから先に投げることにしています。試行回数を稼ぐことによって勝率の低さを補うという発想です。これは運が悪いと全抜きされて終わってしまい、大会の後味が悪くなってしまうため、メンタルコンディションが好調の時でないと使えない考え方です。

 

ラダーと大会との違い

ここで大会に参加する意義について考えたいと思います。

本当はこの話を冒頭に持っていきたかったのですが、デッキ構成の話のあとに持ってきたほうが内容が伝わりやすいかと思い、渋々この位置になりました。

 

ラダー、つまりBo1は、1マッチに1ゲームしか含まれないため、マッチをとるためには負けが許されません。そのため、幅広いデッキに有利が取れるデッキが頂点に君臨しがちです。

対して、1マッチに複数のゲームが含まれるルールが採用された大会では、上で紹介したメタ編成を筆頭に、受けは広くなくても特定のデッキには勝てる、いわゆる尖ったデッキでも十分に活躍させることができる戦術があります。この編成を知っているだけで、実用レベルに至るデッキの数はBo1環境に比べてぐんと増えます。Tier1編成のような、Bo1と構成デッキが似ている編成を使用する相手もいるでしょうが、対戦相手の嗜好には干渉できないのがこのゲームです。自分のデッキを握り替えてみるだけで新鮮な体験をすることができるのではないでしょうか。Bo1環境にうんざりしているという声をちらほら見かけますが、そういうプレイヤーにおすすめです。

 

大会記録

Hearthstone Masters Qualifier Seoul-Asia Ladder Qualifier June ベスト8

 私が初めて参加したhs大会です。ラダーを頑張っていたら運良くtop200finできたため、記念に出場してみました。今では珍しいスペシャリストというルールで、1デッキの中身最大5枚を入れ替えたものをふたつ用意し、3つのデッキを任意に握り替えて使う事のできるBo3の大会でした。

出場した中で最もモチベーションが高い時期で、熱心に取り組んだ大会です。その甲斐あって、個人としては史上最高の成績を収めることができています。当時はTwitterを始めて間もなく、ネットの毒に触れる機会が少なかったため、純粋にゲームを楽しむことができていました。

 

この大会は悪党同盟環境で、コントロール/ボムウォリアーが頭ひとつ抜けて強かった覚えがあります。ウォリアーを握るなら天敵ハンターにも比較的勝機のあるボムウォリアーだと思っていました。しかし、私が持っていたのはコントロールウォリアーのみだったため諦めて、最も使い込んでいたミッドレンジハンターを持ち込むことにしました。サイドデッキは、直近の大会で好成績を残していたリストを丸パクリしました。大会直前に用意したため、サイドリストの練習はほとんどできませんでした。リストを変えるということは有利のつく相手なのだから、さほど練習する必要はないだろうという口実を考えていましたが、今思えばこれは間違いでした。有利なゲームといえどプランの確認程度はすべきでした。

当時の対戦表です。懐かしいデッキがわんさか出てきて目頭が熱くなります。

心の片隅で意識していたマーロックシャーマンはウォリアーに駆逐された結果ほとんど姿を消し、ミッドレンジハンター、ボムウォリアー、招来メイジ、テンポローグからなるメタとなりました。全てラダーでの練習段階で仮想敵として意識していたデッキで、勝ち筋はしっかり把握できていました。ハンターの持ち込みが最も多く、デッキチョイスは悪くなかったようです。

2度の不戦勝を含み順調に勝つことができ、2敗がドロップラインと言われていたにもかかわらずオポ差でベスト8が集う決勝トーナメントに進出することができました。

決勝トーナメント初戦は、仮想敵の中で最も意識していたボムウォリアーでした。勇んで対戦を開始しましたが、とてつもない手札事故で何もできずメインを落としてしまったのを覚えています。

サイド後は、対ウォリアーを意識したリストに握り替えました。しかし、私がウォリアー相手に選択していたプランはスケイルハイドを使い回して爆弾を全て受けきるプランであり、攻めるプランをとる必要があるこのサイドの立ち回りがよく分からず負けてしまいました。反省点はあったものの不思議とそれほど悔しくはなく、初参加にしては十分な成績だと納得していました。

驚いたのはTwitterでのリアクションで、ベスト4の権利獲得者達は大勢から祝福されているのに、権利は得られなかったとはいえ決勝トーナメントまで勝ち進んだ私たちには何もなかったのが衝撃的でした。注目されるのは優勝者のみで、道中踏みつぶされた砂利には誰も見向きもしない、という内容をMTGのコラムで読んでいましたが、まさにそれを体感したような気でいました。のちに優勝したワイルドアレク杯では、中身のないツイートにたくさんの祝福を頂いたことからも虚しさが漂います。

 

HSタッグマッチ2 2位

スタンBo3、ワイルドBo3、BG担当に分かれてBo3を行うチーム戦です。私はワイルドBo3を担当しました。

スタン、ワイルドに分かれてタッグを組む大会が以前開かれており、その続編でした。

この大会は、私が参加した他のチーム戦とは違い、各フォーマットの担当者がひとりだけで、基本的に本番中メンバーに相談することはできなかったため、チームの足を引っ張るまいと猛練習しました。

詳しくは別途記事を書いてあるので割愛しますが、私個人の成績としては全勝することができました。デッキチョイスが功を奏したと感じています。

 

ワイルドアレク杯 優勝

ワイルドの雰囲気に嫌気がさし、しばらく引退することを考えていたところ、久しぶりのワイルド大会が開催されるということで、記念に参加してみた大会です。

引退直前でワイルドをプレイするモチベーションが0だったため、周囲のワイルドプレイヤーに環境を聞いてデッキを決めようとしたところ、奇数ローグは構成に絶対入るデッキだという情報を得ました。そこで私はこのデッキを仮想敵に置き、4コントロール編成を持ち込み3タテする方針でデッキを組みました。これが見事に刺さり、最後まで勝ちきることに成功しました。

 

第2回フェル学杯 ベスト4

スタンダードBo3を3人チームでプレイする大会です。海外の大学対抗試合などを見て、画面の奥で大盛り上がりしている姿を楽しそうだと感じていた私は、そのようなゲームができることを期待して参加しました。

実際には思ったようにはいきませんでしたが、一度回ってきた私の出番は配信台でしっかり勝つことができたので満足しています。

 

ハースストーン甲子園 優勝

前回のチーム戦はスタンダードの経験が浅いメンバーとの出場だったので、今回はスタンメインのプレイヤーとチームを組みたいと思いながら参加した大会です。

あわよくば交流の輪を広げたいと思っていたものの、私の地元山形では残念ながらハースストーンが盛んではないようだったので、身の回りの山形所縁のプレイヤーに声をかけてチームを組みました。

同じ地域出身であるためか波長の合う3人で、軋轢も生まれず楽しく議論することができました。その結果優勝までたどり着き、山形の存在を日本hs界に強くアピールすることに成功しました。山形最強!

2/11 ハースストーン甲子園

kaoruさん主催のスタンダードフォーマットのチーム戦大会、ハースストーン甲子園に参加した。

チーム戦による大会の参加は3度目だが、今回は同じ出身地のメンバーとともに戦うことができ、いつになく楽しめた。勢いに乗って優勝までたどり着いてしまった。

今回は、この大会に参加した記録を残したいと思う。

 

主催のkaoruさん、実況・解説の蒼汁さん、oyatsuさん、運営に関わる方々、とても貴重な時間を過ごすことができました。このような機会を頂きありがとうございました!

 

 

チーム結成

Twitterでハースストーン甲子園開催の知らせを見た私は一目で惹かれ、すぐに参加を決意した。

とりあえず出身地である山形の代表として応募し、他の応募者達と一緒にチームを組む算段でいた。しかし、いつまで経っても山形県の代表者応募がなく、本当にチームが組めるのか徐々に焦り始めた私は、応募締め切りが近づいてきた頃、hs仲間の「paradox」さんにそれとなくhs甲子園についての話を振った。まだ彼をチームに誘うつもりはなかったが、彼はワイルドで4サーバー1位を達成しており、各国の強豪プレイヤーが招待されるワイルド大会に出場し、成績上位に上り詰めるほどの実力者である。ワイルドを制覇するだけでは飽き足らず、スタンダードでも名を轟かせるという野心を抱いており、近頃はスタンダードも精力的に攻略していた。そんな彼がチームに加わってくれたらどれほど心強いだろう、という下心を隠しつつ声をかけたところ、彼のほうから一緒に出場することを申し出てくれた。山形は彼にとって縁のある地だということで、チームメイトとしてこの上ない存在だったので、二つ返事で了承した。

3人一組のチーム戦だったため、あと一人メンバーを探さなければならなかったのだが、paradoxさんも、なぜか私も、ワイルドプレイヤーが周りに多く、気軽に声をかけられるプレイヤーが思い当たらなかった。そんなとき、ふと私のhsのフレンド欄にいた「こくとー」という名前に目が止まった。彼は、ある有名hs配信者のチャット欄に頻繁に現れていたプレイヤーで、そのセンスあるコメントに私はいつも感心していた。ラダーでたまたま対戦したことをきっかけに私が彼のゲームをしばしば観戦させてもらう仲になり、彼の独創的なデッキと人間味溢れるプレイを見ながら、いつか話をしてみたいと思っていた。ちょうどいい機会だったので声をかけてみたところ、初めは参加にとても消極的だった。しかし、押せばいけると直感した私は猛プッシュを仕掛け、無事仲間に引き入れる事に成功した。このときは忘れていたのだが、彼も山形県が出身地だということを以前聞いていた。こうして偶然にも山形ゆかりのプレイヤーが3人集まることとなった。

 

準備

paradoxさんとこくとーさんは直接の接点がなかったため、私がパイプのような役割を務めながら準備を進める形になった。本当は大会の前に一度集まり、持ち込むデッキの相談や調整を一緒に行う予定だった。しかし、それぞれの都合がなかなか合わず、結局大会当日まで一堂に会したことはなかったように思う。このような状況でも微塵も不安を感じることがなかったのは、信頼のおけるメンバーが集まってくれたおかげだ。

デッキに関しては、私が環境でかなり立ち位置のよさそうな武器ローグ、paraさんが得意な自傷zoo、こくとーさんが直近のメタで頭角を現し始めて来ていた復活プリーストを持ち込むということでまとまった。調整は図らずも各自で進めることになってしまったが、paraさんは準備期間で嫌になるほど練習していたし、こくとーさんは日頃からスタンダードを触っている経験値があり、メタに関して卓越した知識を持っていた。この中では私が最も足を引っ張りそうな立ち位置にいると考えていたが、特段練習に打ち込むようなことはなかった。それは、hsを始めてからの総合経験値はそこらのプレイヤーには負けないという自負と、やはり二人のメンバーに寄せる信頼が絶大だったという部分が大きいと思っている。ワイルドで回していた武器ローグの経験値を大きな土台にして、デッキリスト公開制による情報とカードゲームの総合力をもとに勝負を仕掛けるつもりでいた。

 

 大会本番

改めて出場者の面々を確認すると、どこも強豪プレイヤーから成っているチームばかりで、少なくとも私は及び腰で挑んだ試合ばかりだった。

毎試合ラスボスと対峙するような絶望感、恐怖感を抱きながら戦った。

ただ、ゲーム中は雑念を振り払い目の前の展開に集中できる私の元来の特性と、いつでも相談できる頼もしいチームメイトの存在のおかげで、常に勝ち筋を見据えたプレイをできたと思っている。

以下、簡単にゲームの展開を記録していきたい。

ルールは、決勝戦までは先鋒、中堅、大将として3デッキの順番が事前に決まっているBo3。決勝戦のみ先鋒、中堅、大将の順番が事前に決まった勝ち残り戦。

 

ブラケット及び各チームのデッキリストこちらから

 

第1ラウンド vs 神奈川B

○ 先鋒 ローグ vs プリースト

× 中堅 プリースト vs ローグ

○ 大将 ウォーロック vs ウォリアー

 

復活プリ対ハイランダープリは必敗ということで、このマッチは全力で避けたかった。

また、私の武器ローグとparaさんの自傷zooはアグロローグ以外なら相手をできそうだという予想を立てた。

実際のマッチは最悪の展開にはならず、第1ラウンドをとることに成功した。

中堅の試合は、ドロースペルからの火力でちょうど削りきられる接戦だったため、悔しさの残るラウンドとなった。

 

第2ラウンド vs 群馬

× 先鋒 プリースト vs ローグ

○ 中堅 ローグ vs メイジ

○ 大将 ウォーロック vs パラディン

 

ローグは依然アグロ型で、こちらのどのデッキも厳しそうだった。

メイジはアグロデッキどちらかを当てれば勝てそうだったため、誰かをローグの犠牲にして残りのゲームを取りに行くという作戦で挑んだ。

第2ラウンドも危なげなく勝ち取ることに成功したが、プリーストが第1ラウンドと全く同じ展開でジャストリーサルを食らってしまった。精神的にダメージが大きそうだったので、次のゲームでは仮想敵に当たれることを祈りながら進んだ。

 

第3ラウンド vs 岐阜

○ 先鋒 ローグ vs パラディン

○ 中堅 ウォーロック vs デーモンハンター

− 大将 プリースト vs ローグ

 

ウォロがデモハンの相手をできなさそうだということで、これを避ける方向で考えた。

デモハンは最後に来そうだったためプリを当て、残りをローグとウォロで相手しようという算段で挑んだ。

ウォロは厳しい相手だと予想したデモハンを踏んでしまったが、会心のぶんまわりと細心の注意を払ったプレイで勝利をもぎ取ることに成功した。

相手のローグは私と同じ中速タイプの武器ローグだったが、一生ローグと当たっているこくとーさんに回すことなく決着がついてよかった。

 

第4ラウンド vs 愛知A

× 先鋒 ローグ vs ローグ

○ 中堅 プリースト vs ウォリアー

○ 大将 ウォーロック vs デーモンハンター

 

このラウンドは、ローグ→デモハン、プリ→ウォリ、ウォロ→ローグという形で理想の当たり方が決まっていたように思う。あとはお祈りしてオーダーを見るだけだ。

実際のゲームでは、プリをウォリに当てることには成功した。

私は、相手のコンボローグに3T12/12エドウィンを立てられ、昏倒を引けずに負けてしまったが、残りの二人が堅実なプレイによりゲームを拾ってくれたため、チームとして勝ち上がることができた。

ここまで上がってこられた時点で既に想定外の出来事だったため、配信卓で決勝に挑むという事実に全員が驚愕していた。

 

第5ラウンド vs 福岡

*この決勝のみ勝ち残り戦

 

○ ローグ vs ドルイド

○ ローグ vs ローグ

× ローグ vs パラディン

○ プリースト vs パラディン

ウォーロック vs N/A

 

このラウンドは勝ち残り戦ということで、速いデッキで敵を倒して、討ち漏らしを残りのメンバーで片付けるというプランを立てた。受けの広そうなローグを最初に出し、残りをプリーストで、最後に代表のparaさんが構えるという形になった。

 

一戦目、武器ローグvsトレントドル。

後攻3T、電光刹花からグローフライの群れで4体の2/2トークンを出されることになったが、ミニオンを並べながら2枚の死角からの一刺しを使えたため致命傷にならずに済み、テンポよくカードを切っていくことで盤面を制圧して勝利。

 

二戦目、コンボローグ。

こちらはマナ通り終始きれいに動き続けることができた。

相手は4Tハンドをほとんど吐いて秘密の通路を打つことで、エドウィンの勝ち筋を見ていたようだが、引くことに失敗してリソース差が開き、こちらが勝利することができた。

 

三戦目、聖典パラディン

こちらは短期決戦にしか勝機がないと踏み、終始フェイスを削るプレイを一貫した。

しかし、相手のプッシュも強く、あと1点というところで勝利を譲ってしまった。

 

四戦目、復活プリvs聖典パラ。

徹底して盤面の打点を削ぎ、ペン投げ野郎をイルシアによって落としてリソース勝ちするというプランのもと、コントロール戦を仕掛けた。

相手もコントロールタイプのプリーストに慣れているようで、知恵の聖典をこちらのミニオンに打って除去することで手札を圧迫し、トップのカードを燃やしてキーパーツのイルシアを落とすというプレイを選択してきた。合計3枚ほど燃やされたが、死の災厄1枚が少し痛かったくらいでミルによるダメージは大きくなく、イルシアで永続火力であるペン投げ野郎を落とし勝利。

 

所感

冒頭でも書いたとおり、チーム戦ルールの大会には複数回参加しているが、今回がダントツで楽しかった。

真剣に勝利を見据えながらも、険悪なムードになることなく終始和やかに進められたのが、私のプレイスタイルに合致していた結果だと思う。素晴らしいチームメイトに恵まれて幸運だった。

考え得る限り最高のチームを組めた自信はあったが、一方で対戦相手が強豪揃いで尻込みしていたため、私個人としてはまさか最後まで勝ち進むことができるとは思っていなかった。これが三位一体となった時のパワーなのだろう。カードゲームではなかなか味わえない貴重な体験をさせてもらった。

また、カジュアル大会では珍しいしっかりとしたスタイルの配信が用意され、しかも実況解説には公式キャスターが起用された。このゲームの競技シーンに興味のあるプレイヤーなら彼らに自分のゲームを見てもらうのはまさに夢のような体験だろう。いい思い出になりそうだ。

今回の大会に対する感想は、なにもかも「最高」の一言に尽きる。またこのような大会があれば、ぜひ参加したいと思う。